(※エース)
(※ランダム3種)







「なー、これってもうハズレじゃねえの」


大仰に肩をすくめて見せたサッチが息を吐いて天を仰ぐ。
深い森の雑木林に諦めの声が溶けた。


「…『ひとつなぎの秘宝』の手掛かりが、そう簡単に見つかったら苦労しないよ」


ワンピースに関する手掛かりがある。

その情報を得た私たちはチームを組んでとある島へと向かった。
待っていたのは手掛かりでも情報でもなく、釣られてきたならず者を捉える罠だった。

自然に見せかけた人工物混じりの山中には何処にいたのかと思うくらい敵さんが揃い踏み。
探検しつつ蹴散らしたけどキリがない。

おまけに足を踏み入れた直後に超音波みたいな鳥の声が響くわ、落とし穴あるわ、上から謎の液体降ってくるわの大盤振る舞い。


「一番、二番と四番の隊長が揃ってきたのに残念だけど。他の隊員も各隊長が指示して船に引き上げようよ」


サッチの背を叩いて立てと促す横で、マルコは何かを探して目を動かした。


「…?そういえばエースどこへ行ってるんだい?」

「もう船の方に戻ってんじゃないの?」


電伝虫を取り出したマルコがコールするが応答なし。


「…出ねえよい。火の手も上がってねえしどこ行ってんだ」

「火を目印にしないで!ここ燃えたら困るでしょ…とりあえずこの辺を探しながら船に戻るって事にして、何かあったら連絡ね」


私たちはそれぞれに別な方向へ足を向け、森の中を軽く見回りつつ各方面から船に戻ることにした。


「…わっ!」


かなりの数をぶちのめしたけど、森の中にはまだ敵がうろついていた。

いちいち相手をするのは疲れる。
見つからないよう身を隠しながら進むと、何かを踏んだ。

足元を見てみると何かの木の実が潰れており、木の上を小さな獣の影が走ったのが視界に映る。

この森には野生なのか罠なのか、多種多様な実や果実の生えた樹を見かけていた。

転々と落ちてくるオレンジ色の木の実を追いかけると何やら大きな根が入り組んだ箇所を見つけた。

森の中は罠だらけだけど、ここには何か隠してあるのかな?
せめて何か戦利品持って帰りたい。

垂れ下がる蔦と太い根の間を進むと、果物のような甘い匂いが鼻をついた。


「「…………」」


ベルトで猿轡され、手錠を嵌められ窪みの中で身を小さくしたエースと目が合った。

暴行の跡が新しく血が乾いていない。


「…っ、ちょ、何やってんの!?」


飛び出しかけた大声を飲み込んで、小声に抑え駆け寄る。

身体を引き起こして口を解放すると、ぺ、と血混じりの唾を吐いた。


「…くっそ、しくじった!」


火のついた暴れん坊エースが縛られた挙句、怪我をしていた答えは手首にあった。


「これ海楼石?!…動ける?残りの皆はもう港に向かってるの。引揚げようって話になって」

「…っ、走るのは無理っぽい。肋骨と内臓がやられた」


立つもの歩くのもきついだろう。
肩を貸したいところだけれど、背の高さの合わない私じゃ無理。


「エースの電伝虫は?」

「持っていかれた」


私の電伝虫で他の仲間に情報を流し、手錠の鍵を手に入れて欲しいと連絡を回した。


「敵に会ったら私が相手するから行こう」


先導しつつ港を目指す。
森には音の出る仕掛けや飛来式の罠が点在し、私たちの歩みは遅くなる。


「………っ…」


小さな呻き声に振り返ると額に汗を浮かべた血色の悪い顔が目に入る。
口元を押さえた手から血が見えた。


「…ごめん、薬とか持ってなくて」

「平気だ。せっさと合流しようぜ」

「少し休まない?」


辺りに人の気配はない。
私が先に座り隣を示すと、エースは樹の幹にもたれ崩れるよう座り込んだ。


「…情けねえ。森を燃やしちゃ悪いと加減したら食らっちまった」


見つけられてよかった。私はさっきの小動物に感謝した。
敵の陣地じゃ地の利は向こうだ、見つかったらエースはもっと奥へと囚われていたに違いない。


「ここは樹が多いからよく燃える。森が燃えたら、仲間も動物も巻き込まれてしまうって思ったんでしょう」


鎖の擦れる重い音が小さく響く。

他の仲間も鍵を探しているはずだけれど、鍵を見つけるのと私たちが敵に見つかるのはどっちが先だろうか。


「能力者には効果覿面だよね、ソレ」

「まあな、傷も治らねえ」


逃げるなんてこの人の性に合わないだろう。能力を使わずに暴れたのか手首の肉が裂けてた。


「………」


何か言わなきゃ、エースに。

家族になってからは船の皆の力になろうとしてたから、きっとこの現状にかなり落ち込んでる。

元気を出して欲しい、笑って欲しい。
ヘマして落ち込んだ私にそうしてくれたように、私もエースに笑って欲しい。


「…えっと、あの、ほら木の実が落ちてるよ!」


何とかしてエースの気を上向けようと必死に考えて出た言葉が『木の実あるよ』だなんて。

私ってクソほど役に立たないな。
傷も治せないしこんな時に慰めることさえ出来ない。

足元に散らばっている木の実を無造作に拾い上げ、エースは軽く放る。


「食べてみるか、運試しに」

「…っ??!!」


指を弾いて放った木の実を、エースは口でキャッチした。

これだけ罠が点在していて、おまけに何の実かもわからない落ちてたモノを躊躇いなく食べてしまった。


「ば、ばかー!何食べてんの?!毒だったらどうすんの!!」

「…いってえ、殴るな!骨折れてるんだぞ!まさか本気で食うわけないだろ?!」


私に向けて指でつまんで木の実を見せ、食べる振りだったと弁明する。
漂った湿った空気を嫌がったのはエースも同じなのかも。


「…そろそろ行こうぜ、帰ったらこれは食えるかサッチに聞いてみる」

「捨てていきなさい。サッチに木の実より美味しいもの作ってくれるように頼んであげるから」


立ち上がって手を差し出すとエースが私の手を掴んだ。

鎖が鈍く鳴る。


「お前騙されやすいのな」

「…騙されてやったの!」


私は腹に力を込めて身体を引き上げる。
少しこっちに体重を預けエースは足を踏み出した。


「何だそれ、認めろよ。俺が食ったと思って本気で慌ててた癖に」

「ふん、エースなんて恥ずかしい感じに縛られてた癖に!」


他愛ない言い合いをしながら私たちは歩く。森の出口を示す光が見えるまで。











繋がれた手

繋いだ手。







(…恥ずかしい感じってなんだよ、変な事言うな)

(囚われの乙女みたいになって、…痛い!)










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