小話 6
□Fandonia soirée.
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(Side MARCO)
敵船との交戦後の酒ってのは、何でこう美味いのか。
手に入れたお宝や戦闘の勝利、仲間の楽しそうな顔を見てると自然と俺も口が綻ぶ。
「あははは、エースそれ最高、もう一回やってよ!」
「千光花火ッ!」
…俺の両隣にそれぞれ座る酔っ払い、二人。
エースの悪魔の実の新技を酔っ払い二人で考えては試している。
エースが指を鳴らすと小さな火花が輝き、それを見ては大笑い。
「…おい、そこの阿呆二人。船燃やしたら正座5時間は覚悟しとけよい」
再生能力のある俺はともかくとして。
彼女がエースの火で火傷しないかとヒヤヒヤする。
「エースの能力って便利だね、火だから体温高いのかな?」
「うわ、お前の腕、冷たっ!冷えすぎだろこれ」
甲板の夜風で冷えたのか。
俺を挟んで二人は腕を伸ばし絡め合う。
「俺を挟んで騒ぐな」
「「あははは!!」」
何で俺はこんな子守をしてなきゃならねえんだよい?
オヤジと一緒に飲んでいた筈なのに。
「エース、ねえ知ってる?」
「んん、何だ?」
何気なく辺りを見渡して、…男と女である事を忘れたようにくっつく二人を見たら止めに入らずにいられなかった。
内緒話でもしてんのか、顔を寄せた二人はキスでもしそうな近さで。
サッチの揶揄う声がしたが構わない。
水を飲め、という心配を装って間に割って入ったのだ。
「…ぐー」
「…はあ、寝落ちやがったよい、阿呆エース!お前を部屋まで持ってくの誰だと思ってんだよい」
食うだけ食って飲みまくって、やっとエースが潰れた。
「…もう、のめねえ、…たからばらいで、つけといてくれ…」
机に頭を乗せてムニャムニャ言い出したエースの隣に彼女が移動する。
「ふふ、私の勝ちだねエース」
よだれ垂らして寝てる頬っぺたをつついたり、黒い癖毛を撫でる。
「ねえ、エースって可愛いよね、マルコ」
そう言う彼女も、すっかり酒のまわった危うい状態。
赤くなった頬や潤んで見える瞳。
濡れた唇を舐めたい。
「…可愛いのはお前だよい」
エースに触ってる手を掴んで、彼女の掌に唇をつける。
酔った故の行動。そう取られてもいい。
ガラじゃねえとは解ってるが、自分の女が他の男(弟も男だろい)といちゃついてんのは面白くねんだよい。
「…お前が構ってやるのは、エースだけかい?」
腕は冷たいと言ったが、繋いだ手は酒のせいか温かい。
彼女は俺の言葉に照れたような顔で笑う。
「心配性だね」
「何年俺と付き合ってんだ、お前に触る奴が居れば妬くに決まってんだろい」
彼女の表情が変わる。
してやったりという得意げな表情に。
「知ってるよ、だからエースと飲んでたの」
「ああ?」
「…マルコ、オヤジの側に行くと離れないじゃない。こっちに来て欲しかったから」
「!」
思わず抱き寄せていた。
触り慣れた柔らかい肉。
冷えた腕が気持ちいい。
「…ん、ふは、…んん…」
口ん中を荒らす。
薄い酒の味がする。
「…っま、ルコ、…ッ」
「喋るな、噛むぞ」
「…んう、…あふ…」
近くで飲んでた奴から、マルコが盛ってんぞ、と揶揄と口笛が飛んでくる。
中指立てて返事して、エースの身体を抱き上げる。
「これ置いてくるから、先に部屋行っててくれ」
「いや」
なぜか不機嫌な顔でそっぽ向かれた。
この流れでやらねえなんて、と眉根を寄せた俺に彼女は呟いた。
「…私も、抱っこしてほしい」
「…あんまり煽ってくれるなよい、明日動けなくなっても知らねえぞ」
エースを部屋に置いた後、甲板まで戻り彼女を持ち上げ、自分の部屋へと連れ込んだ。
そっちから
欲しがって!
(待っ…マルコ、もう、無理…)
(だらしねえな、もう少し付き合えよい)
→(Side THATCH)