小話 6


□Fandonia soirée.
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(※マルコ誕生日月だったので4種)
(※ACE)




敵船との交戦後の酒ってのは、何でこう美味いんだろう。

初めて飲んだ酒はクソ不味くて、何が良くて飲むのか解らなかったんだけど。
…いつからこの味を美味いって思うようになったんだろうな?




「あははは、これ最高ですねえ、サッチ隊長!」

「そうだろ?お前絶対好きだと思って買っといたんだ!」


…俺の両隣を固める酔っ払い、二人。

この間、立ち寄った島で見つけたという色の変わる酒を回し飲みしている。


「…〜〜おい、あんたら飲みすぎだろ、もう飲むなよ!」


くっそ、マルコの奴逃げやがった!
彼女はともかくサッチまで押し付けやがって!


「エースも飲めよ、ほらほら!帽子とお揃いのオレンジ色〜」

「あー、うぜえ。酒くせえ、寄るなサッチ!」


飲んでても飲んでなくてもサッチのテンションはおかしい。

本格的に酔っ払うと服を脱ぐから、まあ、まだ大丈夫なんだろう。多分。


「えへへ、エース、これ味も変わるんだよ!飲んでみて!」

「………うん」


戦闘中は鋭かった眼光は緩み、隙だらけの潤んだ瞳。

俺は彼女からグラスを受け取り中身を干した。

彼女は飲み過ぎるとだいたいこうなるんだ。困っちまう。

なんというか、…仕草も目つきも色っぽいから。



「おいおいエースちゃんよー、俺の妹と間接キッスしちゃうとかさー。おにーちゃん嫉妬しちゃうぜ」


酒を噴き出すところだった。
彼女にそういう欲を抱かない程、俺も子供じゃねえ。

見透かされてバツが悪い。


「うるせえよ、酔っ払い」


机に頬杖ついて変な事を言い出したサッチの隣に彼女が移動する。


「ねーサッチたいちょー、リーゼント触らせてくださいよー」


肩を揺すって強請るとサッチがニヤついて了解と言う。


「いつも格好良く、髪型きまってますねえ、うふふ」


彼女はニコニコしながらサッチの頭を撫でた。
あの頭の何処が?格好良い?サッチだぞ?


「…んー」


ちゅ、とサッチが彼女の頬にキスをする。
嫌がる素振りもなく、彼女もサッチの額にキスを返した。


「…はは、睨むなよ末っ子!こいつさあ、酒まわるとこうなるんだ。お前も今のうちにやっとけば?」


ちゅ、ちゅ、とサッチの唇が彼女の色んな場所に落ちていく。


「…酔ってる女に手なんか出せるかよ!」


酔った故の行動。
素面に戻れば冗談でした、で終わるなら要らない。

解ってるけど自分の惚れた女が他の男(仲間とはいえ)といちゃついてんのは面白くねえ。


「…エースもリーゼント触りたいの?しょうがないなあ、サッチたいちょうエースにも…」

「サッチの頭なんか触りたくねえ」


彼女の腕を引いてサッチから引き剥がす。
ニヤニヤと笑いながらこっち見てるサッチの頭を燃やしたいのを耐えて席を立った。


「どこ行くの?」

「…あんたの部屋」

「何で」

「襲われたら困るだろ」


俺がそう言うとケラケラと彼女は笑う。何が可笑しいんだよ。


「ほら、着いた…っておい!寝転がるなら部屋に入ってからにしてくれよ!」


彼女は部屋の前で座り込んでしまった。


「立てない、起こしてエース」

「…っ!」


くそ。平常心だ平常心!

抱き上げた身体は女そのもので、鼓動が早くなる。

腕の中にある柔らかい肉。
手に伝わる太ももの感触が気持ちいい。


「…鈍感」


ベッドに降ろしても彼女の腕は離れず、俺の頭を引き寄せ、唇が重なった。


「え?…っ!」


口ん中が溶けそうだ。
薄い酒の味がする。


「…っお、い…ッ」


唾液が、舌が混ざる。
彼女の口の中だと思うと酒よりも酩酊する。


「…ん、…ふ…っ!」

「きもちいい?」

「……」


遠くで騒ぐ声が微かに聞こえる。
ぎし、とベッドの軋む音はやけに大きく耳に届いた。


「…酔って、ふざけてんなら…」

「襲われたら困るのは、誰なのか教えてよ」


…くらくらする。
酔ってんのは俺なのか?

襲われたら困るだろ。
…俺に。

ぎこちなく寄せた唇は拒否されず、その事が俺の欲に火をつけた。


「…明日起きても、俺があんたにした事を覚えててくれよ」




抗い難い誘惑に煽られながら、俺は彼女の中に踏み込んだ。








さあ上手に

溺れてね。







(…おはよう)

(…んー…?うおぁ!!)
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