小話2
□23日の戦い。
1ページ/3ページ
(エース)
部屋のベッドに寝そべり、ダラダラしていたところに彼女がやってきた。
「エース隊長!今日ってフミの日らしいんですよ。って訳で、何か手紙ください!」
部屋に入るなりの無茶振りに言葉が出ない。
「は?フミの日?フミって誰だよ?」
「…ちょっと机に向かって!はい!コレ書いて!」
俺を無理矢理椅子に座らせると、真っ白な紙を置く。
「いきなりなんだよ?手紙書けとか急に言われても書ける訳ないだろ!」
「えぇ?もー、じゃあしょうがない…名前ぐらい書けますよね?ここに名前書いてください」
新しい紙を取り出した彼女に促されるがまま、俺は空欄に名前を書いた。
ポートガス・D・エー…まで書いたが、そこで手が止まった。
………紙の上部に『婚姻届』と書かれていたからだ。
「……っアホかーーー!危ねえ!!」
何が名前ぐらいだよ、書いたら終わりじゃねぇか!!
紙を引きちぎると舌打ちが聞こえた。
なんて奴だよ!
「もー、いいじゃないですか?何が嫌なんですか?エース隊長?」
口を尖らせて彼女は紙を広い集める。
「昨日の夜だって、私達、あんなに愛し合ったじゃないですか?エース隊長だってそのベッドに私を押し倒して必死で腰振りながらアンアン喘いで三回も出し」
「待て待て待て!ちゃんと付けたし俺はアンアンなんか言ってねぇだろ!それお前じゃねぇか!?」
彼女はふん、と鼻をならした。
「そうでしたか?細かい事気にするなんて小さいですよ?隊長」
「細かくねぇ!重要なとこだろ!」
やれやれと首を横に振り、ため息をつかれてカチンとくる。
「ねぇ、エース隊長。しましょうよ結婚。あ、心配ならいりません!エース隊長の事なら私が責任持ってしっかり面倒見てあげますから!」
は?
ちょっと待てお前!
「お金の事も任せて下さい!こうみえて私は貯金とかしてますから」
いや、だから…。
「絶対にエース隊長に苦労なんかさせません!」
俺が口を挟む間も無いほど彼女は熱く言い募り、しまいには俺の手を握った。
「幸せにします!エース隊長の事!!絶対に私が、……ま、守りますから!!」
頬を赤らめ、目を潤ませて彼女はゴクリと唾を飲み込み俺に告げる。
「だから、…わ、私のお嫁さんになってくださ」
「ふざけんなあああああああああ!!」
俺は彼女の手から自分の手を引き剥がした。
彼女は驚き俺を見つめた。
「いい加減にしろよ!」
「え?あの…」
最初の状況と立場は逆転。
俺に怒鳴られた彼女は狼狽える。
「何で俺がお前の嫁にならなきゃいけないんだ?」
「……嫌、ですか?」
「当たり前だ!!!」
力一杯告げると、酷く泣きそうな顔をした。
「…そうですか…エース隊長、すいません。私調子に乗ってました」
悲しそうな声で言いながら頭を下げられて、ちょっと戸惑う。
「隊長は私を嫌いになったんですね、すいません付きまとって。しばらく離れますね」
「は?」
何でそうなる?!
「おい、話が飛び過ぎだろ。お前の事が嫌いなんじゃねぇよ」
「…私の精一杯のプロポーズ、蹴ったじゃないですか。一生懸命なんて言うか考えたのに…今日はフミの日だって言うし、記念日にできるって張り切ったのに」
「………」
そうなのか、そんな考えて………あの台詞なのか?
もっと考えろよ、バカ。
「あー、まぁ、その、なんだ?別にお前のプロポーズが嫌なんじゃねぇし、そういう気が無いわけでも無くも無い…訳でもない」
「……?すいません、解りにくいです、隊長」
涙目でキョトンとする彼女が可愛い。
可愛いんだけど、腹が立つ。
「エース隊長?」
俺がこういう事を言うのが苦手なの知ってるだろ?
俺達、付き合いけっこう長いし。
あんまり畏まって言うのが気恥ずかしいんだ。
「……えーとこの件はまた今度にします!えへ、私もっと強くなったら出直します」
話題を変えようと彼女が明るく言った。
俺がこの雰囲気を嫌がっていると思ったんだろう。
いつも彼女は俺の気持ちを察してくれる。
だから、お前が言ってくれたんだろ。
…お前の方から言おうと思ってくれたんだろ?
「…ちょっと待て。今、考えてるんだ」
「はい?考える?」
彼女の手を今度は俺から掴んで、ここに留まるようにして、必死で頭を回転させる。
……やっぱり俺も男だし決めなきゃいけないところは決めようと考えたりもしてて。
一緒に居るためにどうしたらいいか?とか。
どう伝えようか?とか。
つまり何が言いたいかって言うと…。
考えた言葉、
先に全部
言われた!
(〜〜お前のせいだぞ!先越しやがって!)
(え?え?何の話ですか?)
(うるせぇ!ばか!徹夜した日もあったのに!)
拍手をありがとうございました!
→マルコ