小話 1
□コンプレックス。
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(コンプレックス/貧乳)
(※お相手MARCO)
一応、ノックはしたんだ。
返事がないが気配はある。
急ぎの用事だったせいもあり、居るのならと、ついドアを開けちまった。
……だが、それは取り返しがつかないミスだった。
「………マルコ見た?!見たでしょう?!」
俺は涙目の彼女に胸ぐらを掴まれていた。
「いや、見てねぇよい…」
「嘘だァァァ!!顔背けてんじゃないっ!!」
参った。
足元にはせっかく揃えた資料がばらまかれていたが、それどころじゃなかった。
「と、とりあえず、落ち着いてくれよい」
興奮冷めぬ彼女をなんとか宥めようとする。
「うるさい!………見たんでしょ、この通販を注文するところを!!」
彼女が俺の目の前に突きつけた一冊の雑誌。
その見開きページには、水着や下着姿で自分の豊かな胸を晒す女達のグラビア。
『見せつけちゃえ!Aカップから驚きのEカップに!』
『もう小さいなんて言わせない☆実りすぎ注意!』
『今までのブラがきついんです(笑)』
などの煽り文句が太字で強調されている。
「いや、あのな…勝手に入って悪かったよい。見るつもりは無かったんだが急用で、」
やっぱり見たんだ…と顔をうつ向けた彼女に、冷や汗が俺の背中を流れ落ちる。
「〜〜〜っ、笑えば良いじゃないっ!どうせ貧乳よ私は!!」
がばり、と顔を上げるとガクガクと胸ぐらを掴んだまま揺すってくる。
視界が揺れる。
「サプリメントだろうが、怪しいマッサージだろうが、何にだってすがりたいのよ!谷間?んなもん出来たことないっつーの!!寄せて上げてもできないっつーの!!」
だめだよい、話が通じねぇ。
谷間なんて単語を言った覚えはねぇんだが?
…胸ってそんなに重要か?
確かにこいつは、ウチのナース達に比べりゃ…………。
…………まぁ、成長は人それぞれ、というか…。
「あ゛ー、そのな?お前ェはまだ成長期だろい?これから何とか…」
俺の必死の慰めが効いたのか、彼女は俺を揺さぶる手を止めた。
「…そうだ…マルコ、揉んで」
「…………………は?」
変化球が魔球レベルで飛んできた。
「そういえば前にサッチが言ってたわ…『男に揉まれりゃでかくなるさ』って。私のトップシークレットを盗み見したんだからバストアップに協力してもらうわ」
目が据わってやがる。
いや、ある意味決意に燃えている…。
「待てよい、それは迷信ッ…おい!待て待て!」
不覚にも呆気に取られていた俺の手を彼女は自分の胸に導く。
「責任とってね?目指せCカップ!!」
手を離そうとするが、がっちりと握られて離れない。
「サッチの奴余計なデマを……っ頼むから、手を離してくれよい!」
「酷いマルコ!!触り甲斐ないって言いたいの?!平たくて悪かったわね!?」
だからよ、急ぎの用件が
いやまず、こんな乳触ってる所を誰かに見られたら誤解が
それより、このサイズ、揉んだくらいででかくなんのかよい?
ぐるぐると頭の中が高速で回転し、この状況の打破案を練る。
けど、何よりも。
…お前ェの
乳の大きさ、
船の全員
知ってんだ!
全くトップシークレットじゃねぇんだよい…。
(〜〜解った、後で揉んでやるからとりあえず離せ!)
(ホント?!よろしく頼むよ、マルコ!)
(ああ……)
ありがとうございました!
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