小話 1
□コンプレックス。
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(コンプレックス/背丈)
(124隊長)
「お前さ、身長いくつ?」
マルコ、サッチ、エースとそれに私。
四人で行儀悪く立ち飲みしていた時だった。
何気なく言ったエースのその一言に場は凍りついた。
マルコはあからさまに視線を反らし、サッチはわざとらしく咳を繰り返しながらエースにアイコンタクトを送る。
「何だ?噎せたのか、サッチは。……で、お前ェは何センチだ?」
エースにはサッチのアイコンタクトは全く通じず、サッチは呻きながら手で顔を覆った。
私はエースににっこりと笑ってやる。
「……何センチかしらねぇ?」
「最近測ってねぇのか?結構高いよなー!俺とあんまり変わら…」
「エース!お前ェなんでそう、ぶっちゃけるんだよ!」
サッチが口を挟むが、もう遅い。
「俺は知らねぇよい…」
マルコが呟くのが聞こえたが、耳をすり抜ける。
「エース……言っちゃならん事を、言ったな?私に…」
「は?」
笑顔のまま、声だけが重苦しくなる。
「背が高い?アンタが低いのよ!」
「え、いや…」
詰め寄る私にたじろくエース。
「どいつもこいつも、ふざけんなよ?私が高いんじゃないわよ!お前らが低いんだっつーの!成長期に調子こいてタバコ吸ったり酒飲んだりしてるからでしょ?徹夜した俺格好良いとか思ってんの?バカじゃないの?だから伸びないのよ!!」
「あーあ、やっちまった」
「エースのやつ、ついに地雷踏んだよい…」
マルコとサッチは、少し離れて私達を見守っている。
エースは冷や汗を滲ませて、殊勝にも私の前で正座している。
「…だいたい自分の発育不良を棚に上げて何言ってんの?街ですれ違ったあの野郎……わざわざ振り返って『うわ、デケー女』『あんなにデカイと可愛げねーわ』とか言いやがったあの野郎!!お前が小さいんだよ!くそっ」
思い出したら腹が立ってきた。
「あのよ…そこまでにしといてやらねぇか?」
そう言ったサッチに目を向ければ、合う前に反らされる。
「……ねぇ、サッチ?」
「いや、はい、すいません」
正座したまま撃沈したエースを捨て置いてサッチに滲り寄る。
目の端に早足で歩み去っていくマルコの姿が見えた。
「サッチも私が高いって…デカイ女は可愛くないって思う?」
「いやまさか!そんなに高くねぇって、大丈夫、可愛いぜ?」
誤魔化すように抱きしめる。
私は低いヒールの踵でサッチの脚を踏む。
「〜〜〜っ!!!」
「嘘つきっ!この間『小せぇとそれだけで可愛く思えるよな』って言ってたの聞いたわよ!」
腕を解いて踞るサッチに叫ぶように言う。
「どうせ私は規格外よっ!庇護欲抱かれないわよ!解ってるわよ!うわぁああああん!!」
二人をそこに残して、私は泣きながらオヤジを目指して走る。
私より
低い男なんて
全員嫌い!!
(うわあぁぁぁん!オヤジィィ!!八つ当たりだって解ってるけど…っ!またやっちゃったよ…!)
(グララララ!泣くんじゃねぇよ!お前ェが10センチのヒール履こうが、俺から見りゃ小せぇもんだ!)
ありがとうございました!
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