小話 1
□片恋。
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(MARCO←♀←THATCH)
あーあ、またやってら。
マルコに付いて回って、あしらわれる彼女をまた見ちまった。
犬でも追い払うように手で退けられた彼女には、まるで犬のように項垂れた耳と尻尾が見えるようだ。
座っていた樽から腰を上げて俺はまたマゾになりに行く。
「よう!お前ェも懲りねぇなぁ」
「…サッチ〜〜!」
声を掛けてみりゃ、涙目で抱きつかれる。
「マルコ酷いよ、何を話したって『そうかい』『後でな』ばっかり!!」
「そーかそーか、そりゃあ酷ぇな」
頭を撫でながら慰める。
「サッチはいつも優しいね。マルコと違って私の話をちゃんと聞いてくれて、こうやってくっついても怒らないし」
……でも、お前ェはアイツが良いんだろ?
ため息を飲み込む。
いつもと変わらぬ声と顔。
この癖、嫌になっちまう。
「そう思うんなら、俺にしな。男はマルコだけじゃねぇんだしよ」
「あははは、そうだよねぇ!……本当にそうできたら、良いのになぁ」
軽口に乗せた本音は今回もスルーされちまう。
そういう顔、しないでくれ。
抱き締める腕に力がこもる。
なぁ、なんでマルコなんだろうな?
アイツは無愛想だし、親父第一のファザコンで、あまつさえ語尾が『よい』とか萌えキャラかっつーの!
しかも実はむっつりだぜ?
明るいエロスマンの俺のがましだと思うんだが。
家族で、
仲間で、
同じ月日を過ごした中で。
アイツの何が良くて、
俺の何が、駄目だった?
Sだと自負していた俺は、最近Mなんじゃねぇかと思ってきた。
マルコしか見てないのに
兄貴としか見られてないのに
男として意識されてないのに
諦められず忘れられず、無かったことにも出来なくて。
他の男に夢中な小娘に、
妹である女の子に夢中だなんて。
水面下の
恋心!
(サッチ、痛い)
(ああ、俺も痛ぇよ)
ありがとうございました!
(→Next MARCO)
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