小話 1
□髪にまつわる小噺。
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・髪にまつわる小話
(海賊/MARCO)
だから俺は最初から反対だったのだ。
彼女をサッチの隊に入隊させるのは。
最近の俺には悩みが尽きない。
食堂で朝飯を食べ始めた俺の側に今日も「悩みの種」が、寄ってきた。
「マルコ隊長、おはようございます」
「……おはようさん」
ニコニコと笑う顔は、愛らしく腰に備え付けたガンホルダーがなければ街に居る女の子にしかみえない。
「あの……マルコ隊長」
頬を紅潮させて、瞳をキラキラと輝かせる様は見るものを微笑ましい気持ちにさせる。
「マルコ隊長って下の毛も金パって本当ですか?!」
ただし、口を開かなければだ。
「………下、?」
下の毛ってあれか…?
朝っぱらからなんで年下の女に下の毛の色を確認されなければならないんだ?!
「マルコ隊長って綺麗な金髪ですもんね!脛毛も金だし…そうなると下も…」
「待て。ちょっと待てよい」
話を続行する彼女を制止する。
「今は朝だよな?」
「そうですね」
「で、朝飯を食ってるよな?」
「はい」
それが何か?と言わんばかりだ。
「あ゛ー、そういう話題は朝っぱらから飯の最中にするもんじゃねえよい」
「そうなんですか?でも昨日の朝ごはんの時にサッチ隊長と話したんですけど…サッチ隊長がマルコの毛の色何色だと思う?って言うから気になって」
あの万年下ネタ野郎!
年頃の女に何て教育してやがる!
スプーンを持った手を怒りでブルブルと震わせていると、彼女は改めて尋ねてくる。
「…で、どうなんですか?金色なんですか?」
「ノーコメントだよい」
「ええええー、教えてくださいよ!気になるじゃないですか!」
「ンなこと気にするんじゃねぇ!」
「あ、じゃあ私の色教えるんでマルコ隊長の色を」
「教えねぇ!!」
誰かコイツを止めてくれ!
サッチの隊に入って3ヶ月。
無茶苦茶に影響うけてやがる!
しかも悪影響ばっかり!
「えー、じゃあ…」
「次は何だ?!」
「マルコ隊長デカイって本当?」
握りしめていたスプーンが音を立てて折れた。
「……それは、誰が、言ってたんだよい?」
「サッチ隊長」
「ははは、そうか、サッチか」
俺のこめかみに浮き出た青筋には気がつかず、笑い返して彼女は素直に言う。
「?はい、サッチ隊長です!なんだったら触らせて貰ってこいって!」
「……なァ、サッチは他にも何か言ってたかい?」
「はい!『マルコの女性遍歴とか、どんな体位が好きそうとか、探って来い!お前ェが聞けば一発だ』」
上手にサッチの声真似をして言う。
「……サッチ手前ェそこ動くなよい」
首を捻って後ろに視線を向ければ、案の定。
コチラを窺っていたサッチが朝飯のトレーを持って逃げようとしていた。
船に乗った当初の素直さはそのままに、サッチの悪影響をたっぷりと受けた彼女は、今日も今日とて俺を悩ませる。
彼女をよこせ!
(ウチの隊で教育し直すよい!)
(いやーん、マルコのエッチ〜☆)
(黙れクソリーゼント野郎!手前ェマジで覚悟しろよい!)
(マルコ隊長ー、夜だったらいろいろ教えてくれるんですか?)
(お、いいねぇ!手取り足取り教えてやれよ?マルコ!)
(うるせぇ!黙れサッチ!)
ありがとうございました!
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