小話0

□Up down girl.
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(※マルコ)
(※ランダム表示中)




「……大丈夫かい?」


見慣れた凡庸とした顔がわたしを覗き込む。
その目に心配そうな色が揺れていた。


「…うわあマルコ隊、う、あいたた…ッ!?」


寝転がっていると気が付き焦って起きようとしたら、後頭部に鈍痛。


「まだ寝てろよい。痛むんだろう」


わたしの額を押さえるように、大きな掌が優しく乗った。


「………あの」

「なんだよい」

「………こ、これ…膝枕では?」

「そうだねい」


事もあろうにわたしはマルコ隊長の膝に頭を乗せ、横たわっている。

何故?!なにゆえ膝枕?!!


「…あーまあ、エースがサッチに向かって投げたモップがな」

「?」


ごほん、と咳払いが一つ。


「コントロールを誤って方向ずれちまって…お前に当たっちまってなァ」


ああ、この痛みはそのせいか。
後で殴ろう。

ズキズキと鈍痛はあるけれどマルコ隊長の膝枕効果のおかげなのかな?
わたしはにやけを顔を引き締めるのに苦労した。


「どうせエースがつまみ食いでもしてサッチ怒らせたんでしょう?」

「巻き込んじまってすまねえよい」


マルコ隊長が謝る事じゃないのに。
こんな風に優しくされると、じわじわと胸の中に温かいものが広がっていく。


「いいえ!わたしこそ避けられなかったなんて情けないです。気が緩み過ぎていたのかもしれません」


マルコ隊長の脚って硬い。
屈強な男って膝枕向きじゃないよね、柔らかみが少ないから。

…でも、気分は最高。
だってマルコ隊長の太ももにわたしの頭が乗ってんだよ?!


「お前は悪くねえだろい、あいつらが阿呆みたいに騒いでたのが悪ィんだ」


ウチにいる時はもっと手を抜いてても良い、と笑ってくれる。

マルコ隊長を見上げるのはいつものことだけれど、この体勢やばいな!!

いつもと違う角度だしなんかこう…ときめきが止まらない。
目元や口元に寄る僅かな皺にさえ胸が早まる。

…なにこれわたし死ぬの?!


「さっきより顔が赤いな。熱いかい?」


また頭に掌が触れた。
マルコ隊長の掌はわたしより低いようで、少し冷たく感じた。


「傷が残るようなモンじゃねえが、もう少し休んだら俺が詳しく診てやるから心配いらねえ」

「…はい」


熱を計るためなんだろうけど、この発熱は痛みじゃなくて貴方のせいです。


「わ、わたしの頭、重くないですか?!もう大丈夫なんで洗濯の途中だったし戻りますね!」


膝枕なんてご褒美、次もあるか解らない。
名残惜しいし出来るならずっとこうしていたいけど。

…甲板って結構人が多いしさっきからめちゃくちゃ見られてるし、ていうかわたしがマルコ隊長の事好きなの皆知ってるんですよ!本人以外は!!!

生暖かい笑顔と『良かったな!』とハンズアップを送ってくるクソ兄貴どもを蹴散らしたい。


「洗濯なら他の奴に頼んだ。良いから大人しく寝てろよい」

「っ!」


猫でも撫でるような手つきでマルコ隊長はわたしの髪を梳き、ゆっくりと撫でる。


「はは、お前の髪は柔かいな。女の子だねい」

「…〜こう見えて、わたし、産まれた時から女なんですよ」


顔を掌で隠して照れを隠す。
口からは素直じゃない言葉が溢れる。
ありがとうございますってまだ言ってないのに。


「そりゃァ悪かったねい」


怒るでもなく、くく、と喉の奥で笑うマルコ隊長。
わたしが顔を隠す手を優しく外した。
この人は何で楽しそうなんだろうか?


「お前がいつも頑張ってんのは皆が知ってるからよい、こんな時くらい堂々とサボっとけ」


髪を撫でていた手が移動して首筋の柔らかな肉を撫でた。


「…っあ!」

「俺もサボれて助かるよい。お前を撫でていられるしな。だからもうしばらく良い子にしててくれるかい?」


サボる気なんてないでしょう?
だってマルコ隊長は真面目で頼りになって、サッチ隊長やエースと違って誠実な…。

見上げたマルコ隊長の目がニンマリと歪む。


「……そういう声出されると、他の場所も撫でてやりたくなるよい」







気付いてない?

知ってるよ。






(…っ、ふ、…そこ、やめてください…!)

(力抜いてろ、バレるよい)




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