小話0

□3月9日。
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(Side Shanks)


俺は今、何故か自分の船で自分の部下に追われるという状況下にいる。

追ってくるのは殆どが若い衆だが、それぞれが手に持った物を投げ付けながら、俺に向かってくる。


次々に飛んでくる物を何とか避けるが一つが右肩を掠めた。



「クソっ!お前らどういうつもりだ!こんな事をしてどうなるか解ってんだろうな!!」

後ろから俺を狙って追いかけてくる若い奴等に向かって声を張り上げた。

追い縋る奴等も負けじと声を張り上げる。


「大頭!避けないで下さい!」

「バカ野郎!!避けずにいられるか!!」















「食らえ、大頭!!おめでとうございます!」

「大頭ァ!おめでとうございます、オラァ!!」


俺を追いかける奴等の手には色とりどりのホールケーキ。

ゴツい男共が、満面の笑みで手に持った可愛らしいケーキを俺に投げつけながら叫ぶ。

「おめでとう」と。



……そう、今日は俺の誕生日なんだよ。

何が嬉しくて、野郎共にホールケーキを投げつけられなければならねぇんだよ!!


食いもんは大事にしろ!!


幾つかケーキが体を掠めたが、何とか振り切って樽の隅に身を隠す。
甘いもんは嫌いじゃねえがこんな貰い方はねぇだろ。


「よぉ、頭、楽しんでるか?」

「ベン!」


樽を覗き込んできた長身の男に俺は思わず安堵した。


「あいつ等何とかしてくれよ!見ろ、この様を!!色男が台無しだぞ!!」

「そうか?随分と『色男』だぜ?」

「色の意味が違うだろ!クソ、言い出した奴誰だ!一発殴ってやる!」



誕生日を祝われるのはとても嬉しい。

例えケーキを投げてこようと、あいつ等に悪気はねぇんだろうし、一緒に騒ぐのも楽しい。

だけどよ、楽しみすぎだろ!

楽しいのは俺よりあいつ等じゃねぇかよ!!



「俺だ」

「お前かあ!!ベン!歯ァ食いしばれェ!」


ベンの胸ぐらを掴んで言うと、


「毎年ケーキ食って宴、ってのはつまんねぇとか昨日は散々騒いだじゃねぇか、アンタ」


ベンがニヤリと笑って応えた。


「……言ったか?」

「ああ、うぜえぐらい絡んでな」

「……………」


記憶にねぇぞ。

いや、酒は飲んだ。確かに昨日は宴もあった。


……遡って考えたが「前夜祭だ!」と叫んだ辺りから、俺の記憶は途切れていた。


「アンタがあんまりうるせぇから、ヤソップとルゥの奴とちょっと計画立ててやったんだよ」

「……道理で若い奴等にしては用意周到だと思ったんだよ!絶え間なくケーキは補充されるわ、待ち伏せはしてるわ!」

「ハッピーバースデーオカシラ」

「ふざけんなァ!」


よし、殴ろう。
殴ってやる!

良いよな?だって今日は俺の誕生日なんだからな!!


拳に力を込めると、ベンが口に手を当てて叫んだ。


「おい、頭はここに居るぞ!!」

「うおおおおい!!ちょ、ベン手前ェ!このムッツリ野郎!サド!被虐プレイ趣味!!」


俺はベンを殴る手を止めて焦って叫んだ。


「…おい、誰かヤソップ呼んでこい!この下ネタ野郎の腐った股間と顔面に食らわせろ!」

「はぁ?ヤソップはやべぇだろ!!ちくしょう、ベン!憶えてろよ!」
「あ、居たぞ!大頭ァ!」

「ハッピーバースデェェェ!」
「うおおおおお!」

「あ、ヤソップさん!こっちッス!」

「ちょ、ばか野郎!ヤソップ呼ぶんじゃねぇ!」

「はっはっは、頭ァ、コレに懲りたらあんまり飲みすぎて絡むなよ。…じゃあヤソップ頼んだ」


ベンが呼ばれて来たヤソップにケーキを手渡した。

そのケーキは今までで一番豪華なケーキで「Happy Birth day 」と書かれていた。






「悪いなァ頭!!んじゃ、行くぞー、…よっと」


「ああああああ!!」



……ぐしゃり。



「はは、頭ァ愛されてんなあ!」

「ちくしょう、お前らァ!もっと普通に祝え!」


俺はケーキまみれで叫んだ。


Happy

Birthday!

shanks!!




ごめんシャンクス、おめでとう。




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