Oh! My Girl!!


□Teach me ?
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(Side THATCH)




隊の仲間を急かしながら全速力で掃除を終えた俺は、書庫に走った。

途中で隊長達やクルーの揶揄する声が聞こえたが、無視!構ってられねえ!

書庫につき、勢いよくドアを開けると「静かにしろ!」と言われちまった。無視!!

視線を巡らせると直ぐになまえの姿を見付けた。

隣に南国頭が仲睦まじく座ってやがったけど。

音で俺が来たことを察していたマルコはこちらに視線を寄越すとバカにしたように笑う。


「サッチ、いつもそのくらい熱心に掃除しろよい」


二人の座るテーブルに近づくとマルコが書庫という環境に配慮した小声で言ってきやがった。

無視!パインは黙ってろ!


「なあなあなまえ、どんなの読んだんだ?」

「いろいろ読んだよ。でも解らない文字があってマルコに教えて貰っていた。マルコは何でも読めて凄いね」


俺の質問に答えたなまえは話ながらマルコを見上げる。

な、何だそのキラキラした瞳は!?

なまえにそんな風に見られたマルコは満更でもなさそうに「なまえは覚えが早ェから教え甲斐あるよい」と言うとなまえの頭を撫でた。


「うっわー、何?何なのマルコ!?やっぱりなまえの事たらしこみやがったな!あれほど手を出すなって言っただろうが!!」


マルコの胸ぐらを掴む勢いで詰め寄ると「なまえが見てるよい」と顎をしゃくる。


「なまえ〜、別に俺たち喧嘩してる訳じゃねえぞ?」


不安げに俺達を見つめる瞳も可愛らしいんだけどよー、さっきのマルコを見るような目で、見てくれねぇかな?

ぱっ、と一つのアイディアが頭に閃いた。


「なぁ、なまえ!マルコとはそこまでにしといて今度は『俺が』!教えてやるよ!」

「サッチに教えられる事なんかあんのかよい?」

「うっせぇ!あんだよ、イロイロと!」

「お前がうるせぇよい。なまえ、本は片しておいてやるから、このアホの子の相手をしてやってくれ。……おい、アホ。なまえにいかがわしいこと教えんなよ」


俺に向かって犬でも追い払うかのように手を振り、なまえには「続きはまた明日な」と笑いかけた。

なまえは「ありがとう!マルコ!よろしくお願いします」なんて可愛くお礼を言う。

そんななまえをマルコから引き離すように手を引いて書庫を後にした。

向かう先は、キッチン。


「オッス!ちょっと厨房使わしてー」


中に居るコックに声をかける。


「おお、サッチが来るのは久し振りだな…っと、なまえも一緒か?」

「お邪魔します」

「はいはい、いらっしゃい」

「なまえ、こっちオイデー」


コックに挨拶するなまえを呼ぶ。
ちょこちょこ走る姿がまた愛らしいぜ…!


「マルコが本の勉強なら、俺は包丁のお勉強〜」


冷蔵庫を開けて、目的の食材を取り出す。


「包丁、……料理?」

「そう!良いぞー、旨い飯作れると!良いお嫁さんになれる。是非覚えて俺に手料理振る舞って☆」

「お前ェ、料理で女口説くもんなァ?サッチ」


そこ!余計なことを言わないように!
ニヤニヤこっちを見るコックを睨んで黙らせる。

俺はなまえによく見えるようにその食材に包丁を入れる。

いくつかの切り方があるので直ぐにできる奴を選んで切れ込みを入れてから、まとめてフライパンに投入。

食い入るようになまえは俺の手元を見ている。

いいねー、この真摯な瞳!


「サッチお兄さんは料理が得意なんだね!」

「料理作る相手を選ぶけどな、サッチは」

「うるせぇぞ!外野!…ホラ見てみろなまえ」


口を挟むコックを一喝し、フライパンの蓋を開けた。

フライパンの中には、綺麗に足を開いたタコウインナー。

なまえと一緒にフライパンの中を除き込んだコックは呆れ声をあげる。


「オイオイ、サッチよぉ…いくらなまえがガキだからってそりゃあねぇだろー。なまえに怒られんじゃねぇか?」


あ、やっぱダメか?!
なまえを子供扱いした訳じゃねぇんだが…こういうの、女は好きだからな。

俺ァ、マルコみてえに学はねぇから「なまえに教えてやれる」事っつったら、手先の器用さ、あと料理しか思い付かなくてつい。


「いや、これはほんのお遊びだ!今からが本番!」


フライパンの中を見てから黙ったままのなまえを焦って窺った。


「…サッチお兄さん」

「ごめん悪かった、そのな?なまえをガキ扱いした訳じゃなくてよ」


顔を上げたなまえに大慌てで弁解をしようとした。


「〜〜〜ッ、これ!凄いね!どうしてこんな事出来るの?!凄い!初めて見たよ!!」


なまえは胸の前で手を組み、頬を紅潮させて俺を見上げる。


「……、こういうのも出来るけど」


タコウインナーが出来るまでの時間を使って用意した楊枝とゴマを使って、タコの他にもウサギ、ゾウ、魚、鳥、花などを皿の上に作って並べる。


「〜〜〜〜っ!!か、可愛い!凄い凄い!!」

皿から瞳を俺に移して、なまえは俺を讃辞する。

見上げる瞳には称賛と尊敬。
…そんなに喜ぶ、なんて。

今までに女に披露した時にも誉められたし喜ばれた。
大概は手先の器用さを誉め、自分に尽くす俺の行為に喜ぶ。

尽くす、と言っても女に飽きたら直ぐに関係を止めちまうんだが。


「サッチお兄さん、これ、私にも出来る?教えてくれる?」


こんな風に女に料理の教えを乞われたことも、こんな単純な事を素晴らしいと喜ばれた事も、なかった。


「…ああ、出来る、ぜ?」

「ぎゃははははっ!ははは、よか、良かったなァ?サッチ!なまえは良い子だな!見たのは初めてか!そりゃあいい!」


目尻に涙をつけ、コックが俺の肩をバシバシ叩く。
ああくそ、もっと気の聞いた返事ができねぇのかよ?俺のバカ!!

ぐるぐると今までの女となまえに思いを巡らせていると、なまえが皿を持って尋ねてくる。


「これ、ちょっと借りても良いかな?」

「何だ食うのか?フォークやろうか、なまえ」


コックはなまえの歓迎の宴の時からなまえの反応や態度を気に入っているようで、やけに優しい。


「ううん、あのね」


フォークを取りに行こうとするコックを引き留めて、少し照れながらなまえは言った。


「…親父に見せに行ってきても良い?」


その言葉を聞いて、俺は掌で顔を半分隠し、声も出せず頷くことで返事をした。


「ありがとう!行ってくる!戻ってきたら作り方、教えてね!…こんなの作れるなんて、サッチお兄さんは魔法使いみたいだね!」


皿を持ってオヤジの元に駆けていくなまえを見送る俺とコック。


「よぉ、ひでぇ顔だなァ?色男!」


コックが苦笑いしながら俺の様子を揶揄する。


「〜〜俺は童貞のガキか…っ!」


顔を覆ったまま、天井を仰ぐ。
コックの言う通りだ。

この俺が女に対して気のきいた事も言えねぇで、あまつさえ赤面しちまうなんてな……。

魔法使いみたいだ?
何だその殺し文句は!

俺みてえのが魔法使いだってんなら、なまえは天使か女神だろ。






Cherish

you!







(親父、親父!見てこれ!)

(グララララ!なんだ、食っても良いのか?)

(だ、ダメ!だって勿体無いもの!あ、マルコも見てこれ!)

(…食っても良いのかよい?)

(…二人共、お腹空いてるの?サッチお兄さんに作り方教えて貰ってくる!)





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