Oh! My Girl!!


□Teach me ?
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(Side MARCO)





オヤジに頼まれ事をされるのはいい。
だが正直、ガキの世話なんかしたことねぇんだが…。

書庫に着いて、なまえと本棚を物色しながら俺は内心ため息をついた。

頭一つ以上低い位置にあるなまえを見下ろす。

…子供、しかも女だろい。
どう扱ったもんかね…。

せめてガキでも男ならまだなんとか扱えそうなんだがな。

女っていってもギャアギャア喚かねぇし泣きもしねえから、まだましか。


「…………」


視線の先には、本棚にくっつくような格好で手を伸ばすなまえが居た。
つま先立ちをして精一杯手を伸ばしているが、目的の本までの距離は程遠い。


「…………」


そのまま観察していると、なまえはジャンプし始めた。

が、まだ届かない。

…まあ無理だろうな。
おそらく目的の本は棚の上から二段目。
俺が手を伸ばしてもギリギリの高さだ。

…さて次はどうするよい。


思案げに上を見上げていたなまえは、本棚に手をかけてよじ登ろうとし始めた。


そうきたか!!

こらえきれずに俺は吹き出しちまった。

「ぶはっ!はは、なまえ、面白ェよい!ははははっ」

「な、何?どうしたの、マルコ?」


その格好できょとんと俺を見上げる。


「どうしたもこうしたも…くくく…」

なまえは笑い続ける俺を不思議そうに見ていたが、はっと気付いたように本棚から離れて「足をかけてごめんなさい」と頭を下げた。

俺はなまえの頭を掴み、下げた顔を上げさせる。


「ほら、これだろい」


手を伸ばしてなまえの目的の本を取り、手渡す。


「届かねぇなら、そう言えば良いんだよい」


目を見開いて、差し出された本と俺の顔を視線で往復した後、なまえははにかんで頬を染めた。


「ありがとうマルコ。…そうか、お願いしたらよかったんだね!」


笑顔で本を受け取った。

…不覚。可愛いじゃねえか、コイツ。

サッチの様な意味じゃねぇが、どうも「庇護欲」を刺激される。

小さい生き物ってのは、誰が見てもそう思うよな?

頭を軽く振って思考を切り替え、席に導いてなまえを椅子に座らせた。

ついでに俺も読んでおきたい文献と海図を二、三取り出してなまえの隣に腰を下ろす。



そのまま二人で黙々と読んだ。






知りたい内容に一通り目を通した後、なまえの様子を窺った。

机の上には既に読み終えたらしい本が四、五冊。

大人しくて助かるよい。

記憶がねぇ、とオヤジから聞いているが文字は読めるらしい。


「なまえ、何読んだんだよい?」

「歴史の本と、昔話…あとこれなんだけど、ちょっと解らない文字があって内容は半分位しか解らない」


なまえは今まさに読んでいた本の表紙を俺に向ける。

それは最近の流行りだの、新しい島の情報だのをまとめた冊子。

俺は違和感を覚えた。

なまえがすんなりと読み終えた本は、昔の文字や表現が多用されていて船の中でも手に取る奴は少ない。

読めないからだ。

一方、なまえが読めないと言った冊子は最近のもので、クルー達もよく手にする。



昔に詳しく、現代情報に疎い、という事か?


不思議な子供だ。

先程はオヤジの覇気にも慌てていたものの気を失わなかった。


疑問をなまえに問い掛けようと思ったが、記憶が無いのなら尋ねたところで答えられないだろうし混乱させるだけだろう。

疑問は胸の内にしまい「なまえの解らない文字」の読み方と意味を教えた。



なまえは飲み込みが早く、記憶力もいいようで直ぐに覚えていった。



俺達はけたたましい音を立ててサッチが邪魔しに来るまで「お勉強」をしていた。





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