小説

□レインブルー
1ページ/3ページ


今日は大石の誕生日だ。今朝の朝練にて祝いの言葉をかけた。そのついでというか、本来の目的になる誘いをしてみたんだが…。


「大石、今日帰宅してから時間はあるだろうか?」

「あ、ごめん。今日は英二と不二に誘われてケーキをご馳走してくれるみたいなんだ」

「…そうか」


そこで俺は自分の行動が遅かったことにようやく気が付いた。誕生日という特別な日なのだからこそ大石の予定はすぐに埋まってしまう。誕生日当日の誘いなんて遅いとしか言いようがない。
一体、菊丸と不二はいつから大石を誘っていたのか。あの二人なら一週間前…いや、一ヶ月前からというのも有り得る。大石の誕生日を共に過ごしたいなんて思う奴は沢山いるというのに、何故俺はもっと早くに気が付かなかったのか。考えてみれば分かることなのに。


「本当にごめんな?この埋め合わせはまたいつか」

「気にするな。楽しんでこい」


そう言ってやると大石は嬉しそうに笑った。…この笑顔が俺だけに向けてくれたらいいのに、と何度思ったことか。

本音を言えば少しでも気にしてくれたら良いが、そんな子供染みた我儘は通用しない。そう考えた俺は大人しく引き下がることにした。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ