小説

□きっと落ちてしまった
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“青学を全国に導いてやろうぜ”

1年の頃、手塚と誓ったあの約束。それを成し遂げるため俺は努力は怠らなかったし、手塚の支えになればと思っている。

だけど、3年になってから手塚に違和感を抱くようになった。…何と言うか、少しピリピリしてると言うべきか。あまり目に見えて分かるというわけじゃないんだけど、言葉の端々に冷たさを感じる、気がするんだ。もちろん、俺の勘違いかも知れない。その証拠に不二や英二達に聞いてみるも「いつも通り」と答えていた。

だから俺は自分の気のせいか、または中学最後の大会になるから手塚なりに焦っているのかも知れないと無理やり納得することにした。


「手塚、日誌書き終わったぞ。そっちはどうだ?」


部活を終えても部長副部長の仕事は残っている。その日は俺が日誌を綴り、手塚はランキング戦の組み合わせを考えていた。二人でこうして残ることはしょっちゅうなので、よくある光景でもある。


「あぁ、大丈夫だ」

「また、今回のランキング戦も荒れるかな」

「どうだろうな」

「何たってスーパールーキーがいるんだからな。頼もしい1年が入部してきたし、今年こそ全国制覇だって…」

「大石」


夢じゃない。そう言おうとしたが手塚に遮られた。しかも、その声は何処となく冷たく、不機嫌さを感じさせるものだった。


「帰るぞ」

「え?あ、あぁ…」


先程、話をしていた手塚とは一気に雰囲気が変わった。彼の目にはまるで蔑むかのような睨まれたらひとたまりもない程、恐ろしさを含んでいた。

虫の居所が悪かったのか、それとも早く帰りたかったのか、理由は分からないが何だか申し訳なく感じてしまった。



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