小説

□探し求めて
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大石の誕生日まで1週間をきった。他人の誕生日なんて普段は覚えもしない、というより意識しないが大石は別だ。
俺にとって大石は大切で特別な存在だから。それは大石も同じであり、気持ちが通じ合った俺達は人知れず付き合っている。

誕生日を覚えているのは良いが問題はプレゼントだ。元来、家族以外の者に贈り物を渡すことすらあるかないかであるため、恋人へのプレゼントはそう簡単に思い付くようなものではない。

何度も大石に訊ねてみようと思ったが、誕生日プレゼントは内緒にして渡すのが良いと菊丸だったかクラスの女子だったか忘れたがそんな会話をしていた記憶がある。俺としても大石を驚かせて喜ばせたい。
だから何が何でも自分でプレゼントを用意したかった。

この日から俺は大石のプレゼントを探すことに決めた。学校が終わってから、になるわけだが寄り道という形だけはしたくなかった。俺は生徒会長で生徒の模範とならなければいけない。そんな俺が私用の為に寄り道をするなんてもってのほかである。

だが、帰ってから再び外に出てもそんなに長い時間は見回れない。時間も時間だから店が閉まりかけてるだろうし、夜遅くまで探すわけにはいかない。なので少しでも早く帰宅して大石のプレゼント探しに時間を費やしたい。

そのためには問題がひとつだけある。


「手塚、今帰りか?俺ももうすぐ帰れるんだけど一緒に帰らないか?」


大石と共に下校する時だ。


「…すまない。家の用事があって早くに帰らないといけない」


委員会の集まりに向かうと思われる大石から共に下校しようという誘いの言葉に一瞬心が揺らいだ。本当ならば一緒に帰りたい。だが、一分一秒でも早く帰り大石のプレゼントを見つけたい俺としてはすぐに学校から出なければいけなかった。
心苦しいがプレゼントが見つかるまでは大石とは帰れない。


「そうか、それは残念だな。それじゃあまた明日な、手塚」

「あぁ、すまない」



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