小説
□特別
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外は暖かい陽気に包まれていて、こんな中で公園で日向ぼっこをするのもいいなと考えながら俺は待ち合わせ場所へと足を運んだ。
時計を確認すると11時35分。図書館には5分もしない内に着くだろう。ちょっと早く着きそうだけど外は暖かいし、このまま外で待つのも悪くはない。
と、思っていたのに。
「て、手塚…」
俺が待ち合わせ場所に辿り着いた時には既に手塚は待っていた。
「早いな、大石」
「それはこっちの台詞だって。いつから待っていたんだ?」
「ついさっきだ」
「本当にか?」
「嘘を吐いてどうする」
「それもそうだな…」
「では、少し早いが中に入るか」
「あぁ」
手塚と共に図書館の中へ入る。とりあえず日当たりの良い場所へと席を取った俺達は持って来た教科書やノートを広げる。館内は人が多いわけでも少ないわけでもないが、やはり休日にしては少ないようにも感じられる。やはり外の方が過ごしやすいのか、本を借りても館内で読むことはせずに外で読んでいるのかも知れない。
カチカチ。
シャーペンの芯を出して早速勉強に取り掛かる。図書館独特の静けさと窓から差し込む春のぽかぽかした日差しは集中力を高めさせた。
「んっ…」
暫く時間が経つのも忘れ勉強に没頭していた俺は少し背中を反らせて身体を伸ばす。そんな俺を見て手塚はペンを動かす手を止めた。
「休憩するか」
「そうだな、でも大丈夫そうなら手塚はそのまま続けてくれていいぞ。邪魔はしないからさ」
「いや、俺も丁度休みたかった所だ」
パタンとノートを閉じる手塚に「そうか?」と返す。だが、休憩とは言ってもこのまま座ってばかりなのも身体が鈍りそうな気がする。
「…気晴らしに外へ行こうか」
「え?」
「外は天気も良いからな」
窓の外へと目を向ける手塚。春の陽気はまだ弱まる気配はなく、散歩にはうってつけである。
そんな手塚の誘いに俺は頷き、一旦図書館から出ることにした。
「とりあえず歩こうか」
「あぁ、疲れたら言ってくれよ?」
「俺はそんなに柔ではない」
それもそうだな。と笑いを含みながら返す。