小説

□特別
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「ん…」


今年の30日は休みなので少し遅めの起床。ベッドから起き上がり、時計の針を確認すると7時半過ぎを指している。
まだ覚醒しきってない頭で横に置いていた携帯を開き、日付を確認すると思わず呟いた。


「4月30日…か」


今年もやって来た俺の誕生日。

まだ今日が誕生日だなんて実感しない俺は携帯に受信されていたメールに気付き、それを開いた。送信者は英二でその内容は誕生日おめでとうとメールで絵文字やら顔文字などでデコレーションされた内容であった。
だが、機械オンチな英二は電話やメールの操作は必要最低限まで知らないはず。けれどメールの届いた時間を見ると1時を過ぎていて、彼なりに苦戦しながらもメールをしてくれたのではないかと思うと嬉しくなった。


(まだ寝てるかも知れないけど英二にお礼のメールしておこう)


夜遅くまで頑張ってくれた英二に俺はメールでお礼を打ち込み送信する。

そして俺は顔を洗いに部屋から出た。


顔を洗い、リビングに向かうと家族に誕生日祝いの言葉をかけてもらった。嬉し恥ずかしくも感じながら朝食を済ませた後、いつもならば「誕生日おめでとう!」だけで終わっていた妹から初めてプレゼントを貰った。
折り紙で作った作品達で鶴や犬、猫といった簡単な物から本を見ながら折ったであろうと思われるほど難しそうなパンダやユリの花など色々あった。歪な形ながらも一生懸命作ってくれた妹に胸が暖かくなる。

そんな妹の力作を両手に抱えて部屋に戻った俺はそれらを勉強机の上に飾ってみた。机の上が華やかになった気がする。

そして俺はベッドの上に置きっぱなしだった携帯を開くといつの間にか着信一件、メール一件入っていた。


「どれも手塚からだ…」


着信履歴には手塚の名前。そしてメールを確認するとそこにも手塚の名前が。一体どうしたのだろうと思い、メールの内容に目を通す。


“今日は忙しいだろうか”


それだけしか書かれてなかったため俺は何て返事をしようか悩んだが、メールを打つよりも電話した方が早いかもと判断し、手塚の携帯に電話をかけることにした。

着信ボタンを押して携帯を耳に当てた俺はベッドに腰掛ける。
呼び出し音が鳴って暫くした後、手塚は電話に出た。


『もしもし』

「あ、おはよう手塚。大石だけど」

『あぁ、おはよう』

「えっと…さっきのメールのことだけど一体どういうことだ?」

『そのままの意味だ。今日、何か予定はあるか?』

「特にはないよ」

『ならば、俺に付き合ってもらえるだろうか。予習をしたい』

「あぁ、構わないよ。俺もしたかった所だ」

『では、12時に図書館前で待ち合わせよう』

「そうだな。それじゃあまた後で」

『あぁ』


そこで手塚との会話を終えた。

手塚からお祝いの言葉はなかったけど、誕生日に手塚と過ごせるのは嬉しい。直接会えるだけでも俺にとってはとびきりの誕生日プレゼントだ。例え、手塚がそのつもりじゃなくても。



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