小説
□ホットチョコレート
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2月も入ればどの店もバレンタイン一色である。バレンタインに関係ない店でも「バレンタインチョコと添えてプレゼントしてみませんか」とか、バレンタインデー割引とか、もう何でもありな状態だがやはり一大イベントなんだろうなと改めて思ってしまう。
学校帰りだからか、うちの制服を着た女子や他校の女子がバレンタインフェアをしてる店内へと入って行くのを何度か見た。
「チョコ、か…」
冷たい風が吹く中で微かに甘いチョコレートの匂いを感じるとバレンタイン当日を想像する。
桃と英二はきっといくつ貰ったか競い合うんだろうな。タカさんは律儀にお礼言ってホワイトデーにもちゃんとお返しするだろうし、海堂は礼儀正しいから不器用ながらもお礼言ってて、乾はみんなの貰ったチョコのデータを取り、尚且つ自分も貰うチョコを予想してるんだろうな。越前と不二は沢山貰うんじゃないかな……あと、手塚も。
去年も沢山貰ってて先生が紙袋くれたんだっけ。眉を寄せながら少し不機嫌ながらもちゃんとチョコを持って帰る手塚の姿はちょっとおかしかったかな。だから俺は「チョコを沢山貰えるなんて男として嬉しいものだぞ」と言ったのを今でもよく覚えてる。手塚は眉を寄せたままだったけど。
…だけど手塚にチョコをあげることが出来る女子が羨ましいよ。俺はあげたくてもあげれないしさ。
友チョコなら、なんて考えたけどやっぱり男同士であげるものじゃないしなぁ。
(…深くは考えないようにしよう)
只でさえバレンタインにチョコを貰ってもあまり嬉しくはないだろう手塚にチョコをあげようなんて考えてる時点で手塚に失礼だよな。
そんな考えを振り切るように俺はその日早足で帰宅した。