小説

□友情として=愛情として
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翌日、大石は昨日あったことが嘘のように何事もなかったような表情をしていた。だが、彼は俺と少しばかり距離を取っているのが分かる。
気持ちを伝えることもしなければ昨日のことは忘れて尚且つ俺から距離を取る。それが大石の答えのようだ。だが、それが最良の選択なのかも知れない。俺は大石の気持ちに答えてやることは出来ないのでこのまま俺に気持ちを向けていても仕方のないことなんだ。

1週間ほどそんな状態が続いた。いつもは俺の隣に立っていた大石は今では用がない限り俺に近付くことはない。最初は周りの部員達も俺達の変化に気付いた。だが、喧嘩をしてるわけではないので変化を気にしつつも問い詰められることはなかった。
このまま大石は俺への気持ちが薄れていけば良い。だが、心にぽっかり穴が空いたように寂しく感じるのは何故だろうか。


「ねぇ、手塚。話があるから部活終わりの放課後、僕のクラスに来てくれないかな」


そう不二に告げられたのは昼休みのことであった。何故部活終わりにわざわざお前の教室に行かなければならない?今では出来ない話なのかと問い掛けると「もちろん。とても大事な話だからね」と含みのある笑みを浮かべる。正直、こいつには関わりたくなかった。俺と大石の関係を崩した張本人でもあるため嫌な予感しかしない。だからといって断ることも出来ないので俺は部活終了後不二の教室へと向かうことにした。
俺が部室から出る前に大石は「教室に忘れ物したから先に帰っててくれ。鍵はちゃんと閉めておくから」と言って先に部室から出たが、この1週間大石と共に帰宅することもなくなった。

大石が俺から離れている。そんな現実に心の何処かで焦燥感を感じた。何故そんな気持ちになるのか分からないまま俺は振り切るように3年6組へと早足で向かう。


辿り着いた3年6組の扉を開けようと手を伸ばすが、俺は開けることはしなかった。確かに中には人の気配がするが微かに話し声が聞こえたからだ。どうやら先客がいたらしく不二は誰かと話してるようである。一瞬躊躇ったが俺は聞き耳を立てることにした。



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