小説

□Happy Birthday to T
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明日は手塚の誕生日。もちろんプレゼントはちゃんと決まっている。だって大事な手塚の誕生日なんだ。1ヵ月前から目を付けていた物があって、これなら手塚も喜んでくれるんじゃないかなって思っていたんだ。
それは発売されたばかりのルアーでルアー釣りもする手塚には良いんじゃないかと思うも、既に手塚が持っていたら意味はないので俺は先程聞いてみた。


『最近新しいルアーが出たみたいだけど手塚知ってるか?』

『あぁ、先月出たばかりのルアーだな。まだ買っていないので売り切れる前に買えたらと思っている』


それを聞いて俺は心の中でガッツポーズをし、これで手塚にルアーをプレゼントすることが出来ると確信した俺は学校帰りに釣り用具を売っている店へと向かった。寄り道をするのは少し気が引けたが、手塚のためにも一刻も早く買いたかったのだ。


「えっと…」


ルアー棚を見て新商品であるルアーを探した。だが、俺の求めていたルアーの場所だけ、空っぽでひとつもなかったのだ。1週間前に見た時はまだあったはずなのに…。そう思いながらも目の前に突き付けられる現実に俺は焦って他のルアーの場所に紛れてるんじゃないかと探すも見つからず、近くにいた店員の人に在庫がないか訊ねてみた。

店員さんが調べてる間、俺は祈るような気持ちであったが現実はそう甘くはないようだ。どうやら昨日売り切れたばかりで入荷するのに1週間は掛かるそうだ。その言葉を聞いた俺は世の中はそんなに上手くいくことはないと実感した。
手塚の誕生日は明日で1週間も待つわけにはいかなかった。何か別の物にしようと俺は店内をくまなく探したが代わりになるような物は見つからず焦るばかり。

結局、代わりになるプレゼントは見つからないまま俺は重い足取りで帰宅した。

その日の俺は眠りにつくまでずっと手塚のプレゼントについて考えていた。



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