小説
□告白 〜俺とお前は黄金ペア〜
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大石とダブルスしてる時って安心して俺の好きなようにプレイ出来るからスッゲー相性いいと思うんだ。テニスに関しては。
部活ん時はさ、黄金ペアだから常に一緒にいて当たり前ってゆーか、俺があっての大石で大石があっての俺って感じ。
でも普通の学校生活とかじゃさ、あまり一緒にいることってないんだよね。何て言うか…元々俺と大石ってタイプが違うからテニスっていう共通のものがなきゃ出会うことも話すこともなかったんだと思う。
だけど手塚は違うじゃん。部活ん時だけじゃなく、学校でもプライベートでも大石と一緒にいることが多いっしょ。互いに悩みを打ち明けることが出来るみたいで、俺とは違って深い仲。
それって何だか、羨ましいし、悔しいし、悲しい。もう色んな感情がごちゃ混ぜのごった煮状態。
俺、いつの間にか大石のことが好きになってた。てか、大好きなんだと思う。
「……」
目の前には今日の出来事を日誌に書く大石。部活は終わったってのに大石は仕事がいっぱいだった。そんなの部長の手塚に任せたら良いじゃんって言ったら大石は「手塚は生徒会で忙しいし、俺で出来ることはやっておきたいから」とか言って日誌を書き続ける。まぁ、その手塚が生徒会に行ってるおかげで今この部室にいるのは俺と大石の二人っきりなんだけどさ。
けど、大石は俺を待たせてるのが申し訳なく感じたのか、遅くなるから先に帰っていいよって言ってくれたけど、せっかく二人っきりになったんだし帰るなんて勿体無さすぎる。どうせ帰ったら大石は生徒会から戻って来た手塚と帰るかも知れない。手塚ばっかり大石といるのはズルいから今日は大石と一緒に帰るまで俺は帰らないと決めた。
「ねー。おーいしー」
暫くは大石に集中してもらおうと静かに待ってたんだけど、待つことに飽きた俺は机の上で項垂れながら声を掛ける。
「なんだい、英二?」
「大石って手塚とデキてんの?」
「……はい?」
ペンを走らせていた手をピタリと止め、日誌に向けていた視線を俺へと向ける。
「だから、手塚とデキてんのかって聞いてんだって」
「デキ、てる…って、何が?」
「付き合ってんのかってこと」
「…そんなわけないだろ?第一、男同士だぞ」
嘘吐いてるかも知れない、なんて一瞬頭に過ったけど、なんか本当っぽい。嘘吐いてるようには見えなかった。
「大石ってば同性愛に偏見とかあんの?」
「いや…そういうわけじゃないけどさ。そもそもどうして俺と手塚が…その、デキてるって話になるんだ?」
「だって、いつも一緒じゃん」
そりゃもう憎たらしいくらい。なんて言ったら大石ことだ、きっと「英二、手塚のことが好きなのか?」って勘違いされるに決まってる。
「別に今は一緒じゃないぞ?それにいつも一緒だからって付き合ってるわけじゃないんだからな」
「ふーん…」
適当に返事をすると大石は誤解が解けてほっとしたのか、安堵の溜め息を吐く。そして再び日誌へと手をつけた。
顎に手を当てながら机に肘をついて大石の右手を見てみる。ペンを持つその手が、指先が、綺麗に見えた。ていうか、大石そのものが綺麗。
人を好きになると美化されるって言うけど、好きになる前から大石は綺麗だと思ったことは何度だってある。もしかしたらその時から既に大石のことが好きだったのかも知んない。
そして俺は机から身を乗り出して大石の頬に触れた。
「…英二?今度はどうし…――っ!?」
ちゅっ。大石の頬に唇を寄せた後に音を立てて離す。大石はキスした所に指先を当てながら顔を真っ赤にさせていた。
「なっ…え、英二っ!い、いきなり何するんだよっ」
「ちゅーだよ。大石と手塚が付き合ってないんならまだ俺にもチャンスがあるってわけでしょ?」
「チャンスって…」
「大石の恋人の座。だって俺さ、大石のこと好きだから。ボーッとしちゃってると次は大石の唇を奪っちゃうかんな?」
にやりと意地悪な笑みを浮かべ、机の上に正座をした状態の俺は人差し指で大石の唇をちょんっと突いてやる。ますます赤くなる大石はどう対処したらいいのか分からないみたいで目を泳がせ、何か言おうと言葉を探してるのか「あー…うー…」と唸る。
そんな大石に隙あり、と呟き先程の宣言通り唇を奪った。
この行動によって大石と俺の運命が大きく変わるんだろうなとぼんやり考えながら。
「大好きだよ、おーいし」