小説
□本当に喜ぶもの
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「…プレゼントなんだが、明日でも構わないか?」
「えっ?いや、構わないけど…プレゼントなんて別にいいんだよ?」
「…そういうわけにはいかない」
「そうか?…でも、てっきりそれが俺へのプレゼントだと思ってたけど違ったみたいだな」
“それ”と言った大石の視線はちらっと俺の後ろ方へと向いていた。その視線の先は担いであるテニスバッグ。よく見ればちゃんとチャックを閉めていたと思われていたバッグは少しだけ開いていて、ひょっこりとラッピングされていたプレゼントが見える。…しまったとは思わずにはいられない。
「あ、いや…これは……大石のプレゼントだったんだが、今朝になってお前には合わない気がしてな…」
「え?なんで?」
「男が男に渡す物とは思えなくて…」
「でも、手塚が俺のために用意したんだろう?だったらそのプレゼントが欲しいな」
「だが…」
「合う合わないは関係ないんだ。手塚が俺にプレゼントしようって思って用意してくれたのが嬉しいんだからさ」
「な?」と俺の好きな笑顔で言われるとプレゼントを渡さないわけにはいかなかった。
観念した俺はバッグから茶色い紙袋にプレゼント用にとリボンとシールがラッピングされている物を大石に渡した。
「ありがとう、手塚。開けてもいいかい?」
「あぁ」
目の前でプレゼントを開ける大石を前に俺は心臓の鼓動が増していく。大石が中身を確認した後、思わず息を飲んだ。
「おっ、ストラップじゃないか。ありがとう手塚!早速携帯に付けてみるよ」
そう言った途端、大石はすぐに自身の携帯を取り出してストラップの紐を小さな穴に器用に通して素早く取り付ける。
「…大石、嫌じゃないか?」
「え?何が?」
「その…女々しい贈り物だったんじゃないのか、と」
「そんなことを気にしていたのか?別に女々しくなんてないし、好きな子から貰ったプレゼントは何だって嬉しいものじゃないか」
笑いながら彼は俺に可愛いなと呟いては携帯に取り付けられたストラップを愛しげに見つめていた。
「でも…ちょっと惜しいことしちゃったかな」
「何がだ?」
「プレゼントはお前がいい、なんてちょっとベタなことも言いたかったなって」
その言葉に顔が一気に赤くなる。もし、先程そう言われていたら俺はきっとどうしたらいいか慌てふためいていたに違いない。
だが…
「……俺ならばいつだって大石のものじゃないか」
そう呟くとその内容が聞こえたのか大石は嬉しそうに笑っていたのだった。