小説

□本当に喜ぶもの
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たまたま通り掛かった雑貨屋に青色のガラスで出来た小さな魚のストラップが売っていた。
大石の誕生日プレゼントにはちょうどいいんじゃないだろうかと思った俺は深くは考えずにそのストラップを購入することに。
後々に気がついたことだが、俺は恋人にプレゼントをする物をこんな可愛らしい物で良いのかと思い悩んだ。男が女に、女が男に贈るなら未だしも男が男に贈る物とは思えない。
残念なことにそれに気づいたのは誕生日当日の朝。既にプレゼントはテニスバッグに入れていたが、今から代わりのプレゼントを用意するには時間が足りない。


「おはよう、手塚」


家から出ると、大石が笑顔で待っていた。共に学校へ行くと約束したから当然なのだが、俺にとっては気まずいことこの上ない。


「あ、おはよう…大石」

「…手塚?何だか元気ないみたいだけどどうしたんだ?」

「いや…。大石、その……誕生日おめでとう」

「ありがとう」


大石と並んで歩くと、俺の思っていることが少し顔に出ていたのか、大石がそんな僅かな変化に気付き顔を覗き込む。せっかくの大石の誕生日に心配を掛けさせたくない。だから話を変えようとすぐに祝いの言葉を口にした。彼は笑顔で返してくれる。



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