小説
□プレゼント=?
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4月30日――。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう手塚」
ちょうど土曜日ということもあって今年は大石の部屋で誕生日を祝った。
そして用意したプレゼントを机の上に置く。小さな弁当箱に深緑と赤のチェック柄の風呂敷で包んだそれを。
「俺からの誕生日プレゼントだ」
「わざわざ用意してくれてありがとう。もしかして手塚の手作り弁当?」
「開けてみろ」
そう伝えると大石はわくわくした表情で包みをほどき、弁当箱の蓋を開ける。そして中身を見た大石は一瞬目をぱちくりとさせた。
「梨、好きだろう」
「う、うん。好きだよ」
あの弁当箱の中には沢山の梨を敷き詰めていた。もちろん、皮も綺麗に剥いてある。この弁当箱の中で約二個分だ。
「梨ならお前は喜んでくれると思っていたが安っぽかったか?」
「そんなことないよ。好きな物をプレゼントされて喜ばない人なんていないしね。それにしても皮まで剥いてくれたんだな。ありがとう、手塚」
「すぐに食べてもらおうと思ってな」
可愛らしく笑う大石の前で俺は弁当箱の中に入っていた爪楊枝で梨をひとつ刺し、大石の前に差し出す。
「口を開けろ、大石」
「えっ?えっ!?」
「お前の誕生日だ。俺が食べさせてやる」
「い、いや…自分で食べれるから大丈夫だよ!それに恥ずかしいじゃないか…」
頬を染め、わたわたと慌てては梨と俺を交互に見る大石がまた可愛らしく見える。そんな反応をすると余計に意地悪をしたくなるとも知らず。
「この空間には俺とお前しかいないだろう」
「で、でもさ…」
「手が嫌なら口で食わせてやろうか?」
「うぅ…。手でお願いします」
先程よりも一段と顔を赤くさせた大石に小さく笑って、俺は持っていた梨を大石に食べさせた。恥ずかしそうにしながらも瑞々しい果実をシャクシャクと噛みしめ「美味しい」と後に笑顔を見せた。
その綻ぶ顔を見ることが出来て嬉しくなった俺は来年の誕生日プレゼントは何にしようかと今からまた悩むのであった。