□ペテン師の憂鬱
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シズちゃんがイラついてる。
まぁ当たり前か。君の大好きな名無しの隣がにっくき俺で、距離が近いんだもんねぇ。


でも俺は、そんなの知らない。
もっと、近づいてやる。


「名無し、ここは√3だってば」

ノートを指差しながら俺は名無しとの距離を詰める。


『あ、そっかありがとう臨也』
そんなことにも気づかない名無しは俺に笑いかけた。
無意識にやってるから余計たちが悪いんだよねぇ…

「あと、ここも間違ってる」

『え゙』

そう指摘すると名無しはいかにも分からないといった表情を浮かべていた。


その後ろでさらにイラつくシズちゃん。
全く君の単細胞には困ったもんだよ、少しは我慢したらどうなの。


それに、俺だって名無しが好きなんだから…

「ここにはこの公式使うんだって」

『あ−、そっかぁ』

だから、少しくらいいいじゃん。
俺知ってるんだよ?名無しがシズちゃんのこと好きってことくらい。

だからせめてさ、これくらいは許してよ。
どうせ叶わない恋なんだからさ、少しくらい夢見させてよ。


『ぃたっ』


シズちゃんは名無しの頭に紙飛行機を飛ばした。
見事命中して名無しは痛がってる。

でも痛がってるわりに嬉しそうに笑う名無しを見ていたら、やっぱり辛くて。



隣の席になったことを、今更後悔した。


辛くないはず、ないのにね。


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