NARUTO小説

□それでも僕は
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人の視線が、酷く鬱陶しい。



『あれがうちはの生き残りの子ですって』


『まあ、あんなに小さいのに可哀そうに…』


『あの子のお兄さんでしょ?一族を皆殺しにしたって言うのは…』





あの夜以降、俺は人の視線と言うものに敏感になった。



同情、憐れみ、好奇、恐れ…



それに込められているものは様々だ。



ああ、鬱陶しい。


『可哀そうに』


そんな安っぽい言葉を言われたって。


お前たちに何が分かる?








「この!人殺しの弟が!」


目の前の少年はそう俺に吐き捨てた。




アカデミーが終わると街をぶらぶらとするのが最近の俺の日課だった。


以前は夜遅くまで修行をしていたのだが、どうしてもそういう気分にはなれなかった。


あの頃はただ父に認めてもらいたい一心で頑張っていた。


けれど、今はその父はいない。


そしてその背中を追い続けた兄も。


誰ももう俺の傍にはいないのだ。



今日は公園に一人でいた。


その時、年上であろう少年が自分と同じくらいの年の子供を苛めているのが眼に入った。


正直、初めは関る気なんてさらさらなかった。


だけど、地面に突き飛ばされた少年を見てある場面が脳裏によみがえった。


『兄さん』


自分が怪我をした時、誰よりも早く来てくれたのは兄だった。


気がついた時には身体が動いていた。



自分がこれでもアカデミーの中での成績は一位だったし、年上と言えどのすのは簡単だった。



「クソッ…」


地に伏せ悔しげにこちらを見上げる少年。


嗚呼、何と弱い生き物なんだろう。


あの夜、兄の眼にも自分はこう映っていたのだろうか。


俺の冷めた目を見て、少年は歯を食いしばって叫んだ。



「この!人殺しの弟が!」



その台詞に目の前が真っ赤になった。


ぎろりと睨むと、少年はびくりと身体を震わせた。


ーほら、やっぱり弱い。






人殺しの弟が、と言われた時。


お前に兄さんの何が分かるんだ、と言いたくなった。


ずるいと思う。


あいつについて思い出そうとすると、笑った顔ばかりが浮かんでくるのは。


俺はあいつを殺さなくちゃいけないのに。




それでも僕は



まだ、あなたを信じたいと思ってしまうんだ。








 
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