沖土小説

□1か月の駆け引き
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それは、あいつの一言から始まった。



「土方さんって好きな人いるんですかィ?」



「は?」



「は?じゃねェよ土方コノヤロー」



誰だってあんなこといきなり聞かれたら驚くだろう。



ましてや相手がこいつなら。



「おい総悟。頭でもぶつけたか?」



「土方さんの頭ならいつでもぶつけてあげますぜ」



俺はため息をついた。



「つーか何でそんなこと聞くんだよ?」



お前らしくもねェ、という言葉を飲み込んだ。



「いや、土方さんはそういう経験が豊富そうだから参考にさせてもらおうかと思いましてねィ」



その言葉に俺は驚いた。




だって…




「お前、好きな奴なんていたのか?」




「そりゃあ俺だって高1なんだから好きな奴の一人や二人いますぜ」




「二人はまずいだろ」





初耳だ。





俺はふうっと息をついた。





「で、どんな奴なんだ?」





「年上で、綺麗な黒髪をしてるんでさァ。
けんかっ早いんですが、妙なところで涙もろいんですよ」





………




俺は頭の中で総悟の周りにいる年上の女性を思い浮かべたが当てはまる人物が思い浮かばない。




「あー…志村姉か?」




「全然違いますぜ」





「……だよな」




こいつが近藤さんが惚れてる女に惚れるわけねェ。




だったら…




「誰だ?」




「何であんたに言わなきゃいけねェんですか」




それもそうだが。




「人に聞いといてそれはねェだろ」





総悟はため息をついた。




「で?」




「?」




「あんたはいるんですか、好きな人」




全くこいつは。





ため息をついて、俺は小さい声で



「いるよ」



と答えた。





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