NARUTO小説
□02.接触
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「………大した情報は持ってないな」
幻術にかかり意識が飛んでいた男を掴んでいた手を無造作に放すと、ドサリと男は地面に転がった。
幻術にかけて情報を手に入れようとしたものの、入ったのは『大蛇丸が中忍試験で木の葉崩しを計画していること』『うちはサスケの暗殺を命じられたこと』くらいだった。
地面に転がった3人に視線を落とす。
ーどうするか、こいつら。
殺しておくべきだろうか。
バチッと千鳥を纏った手が辺りに音を響かせた。
ー運が無かったな。
心の中でそう呟き、手を振りおろそうとした時だった。
視界の端に地に伏した『俺』が映った。
「あ………」
一瞬の躊躇いで手が止まる。
何も知らず木の葉で笑っていた頃の俺。
ー『お前』が血に染まることを望んではいない。
「…………」
小さくため息をついた。
何も知らず、無力だった自分が酷く嫌いであると同時にお前には何も知らないままでいて欲しかったなんて勝手なことを思ってしまう。
全てを知った後だったら絶対にそんなことは思わないだろうが、そこに見える形で『過去の自分』がいるせいだろうか。
ーイタチは、こんな気持ちだったのかもしれないな。
『過去の自分』を見ていると何となくイタチが己に抱いていた想いが分かってしまう。
ーだからだろうか。
木の葉を憎む想いに変わりは無いものの、お前にはこうなって欲しくない。
「仕方ないな…」
アカデミーで習う最も初歩的な術の一つの印を結ぶ。
ボフン、という音と共に俺の姿がカブトへと変わった。
このころのカブトは大蛇丸のスパイとして俺達を監視していたようだし、俺達の前でも駄目な下忍を演じていたから信頼を得やすいだろう。
それに『俺』が目当てでカブトが接触してきたときに万一呪印をつけられたりしたら大変だ。
こんな奴に変化するのは気に食わないが、状況が状況だ。
倒れた『俺』の方に手をかけた。
「君達、大丈夫かい?」
「………あんたは、」
薄く眼を開く『俺』に、俺は作り笑いを浮かべ答えた。
「ああ、僕は薬師カブトだ」