NARUTO小説
□幸福論
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みんなが幸せになれる、何て戯言だ。
そんなのを本気で信じられるのは馬鹿だけだ。
そして、俺の前にいるこの男も、紛れもなくその馬鹿の一人だ。
「お前は俺を連れ帰ると言ったが、その後どうするつもりだ?」
「どうするもこうするもねェ!今はただお前を木の葉へ連れ帰る、それだけだ!」
俺は、フンと鼻を鳴らした。
「お前は馬鹿だな、ナルト」
お前が俺を追い求めるのは、お前のただ自己満足だ。
そして、木の葉で仮初めの平和の上で全てを忘れて暮らすのが、俺にとっての幸せであると固く信じているのだ。
全く、滑稽を通り越して憐れにすら感じる。
「復讐なんざ、誰も幸せにはなれねェんだ」
サスケ、と訴えるあいつがあまりにも真剣で笑った。
「なあ、ナルト。お前は、『皆が幸せになれる』と思ってる口だろ?」
ナルトが困惑した表情を浮かべる。
「それに、皆が幸せを望んでいると信じている」
嘲た笑みを浮かべて見せた。
「だがな、そんなものは現実を知らぬものの戯言だ」
「サスケ…」
「誰かの幸福が、誰かの不幸になることもある」
そして、
「お前らが幸福でいることが、今の俺にとっての不幸だ」
ナルトの脳裏に、ある言葉がよぎった。
ーお前たちの平和が、暴力であると。
「俺達から幸せを奪ったお前らが、それを得られると思うなよ」
血のような紅い目が、ぎろりとこちらを向いた。
幸福論
殺気を帯びた眼。
あの夜から、
俺は一度も自らの幸せを望んだことなど無いと言う彼に、
かつての幸せな日々が過った。
もう、あの頃には戻れないのだろうか。
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