オリジナル

□霞祭
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「あれ?石野さんだ」

なんだかんだとおごられてしまった定食を持ってどこに座ろうか迷っていると、シュークリームを頬張る石野さんがいた。
かわいい。
普段がかっこいいから、そういうところが余計かわいらしく見える。
そんなことを思いながら近づくと、石野さんもオレたちに気づいたみたいだ。

「こんにちは、お食事ですか?」

「まあな、忙しいもんで」

先輩がそう答えると、石野さんが「大変ですね」と言いながら向かいの席を勧めてくれたので遠慮なく座ることにする。
ようやくありつけた昼食を勢いよく掻きこむと、石野さんが一瞬微笑んだ気がした。
先輩はいつもよりのんびりと食べているようだ。
慌てて取る日が続いてたもんな。
忙しかった日々を思い返しつつ、オレが半分ほど食べ終えたところで石野さんが口を開く。

「そういえば、昨日はどうでした?」

「オレと芹沢で焼きそば売ってたらやたら女が買いに来てよ、オレの接客態度のおかげだな、あと芹沢の」

話題を振られて、得意満面で話し出す先輩。
ご機嫌なのはそのせいか。
そういえば先輩好みの美人もいたもんな。
そんなことを考えていると石野さんから思いがけないセリフが発せられる。

「腐女子からの布施、ですか」

あ〜なるほどな。と一人で納得してから、相手を思い出してすぐにつっこむ。

「ってオレと先輩が!?なんで」

「なんでってワンコ攻め要員が消えたからでは?」

「亀山先輩の代わり?しかもオレ×先輩なの!?」

それはムリと言わんばかりに手を顔の前で動かす。
でも一人、この話題を理解していない人がいた。

「おい、布施ってどういうことだ」

「あぁ……先輩は知らないっすよね」

羨ましいなと思いながらそう言うと先輩に顔の真横で睨まれた。
なんて理不尽。
だからちらっと石野さんに助けを求める。

「腐女子から説明しましょうか」

オレのヘルプを受け取ってくれた石野さんがそういう。
先輩は「婦女子?女子供だろ?」とやっぱりわかっていなかったようだ。

「いいえ。腐る、女、子供の子、で腐女子です。簡単に言うと、ゲイカップルを見るのが好きな人のことを言います」

石野さんの端的な説明に先輩は「へえ」と返したが、半分も理解してないだろう。
理解できていても、『そんな人もいるんだ』程度のはずだ。
オレがカノジョに教わったときがそうだったから。


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