Amaretto

鬼より怖い優しい彼
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そういうと、土方さんは私から身体を離した。

「今日のところは勘弁してやる。」

「…土方…さん。」

「着物を直しな。」

そういうと立ち上がると、私に背中を向けてドカッと胡座をかいて座った。

「途中、うちの下っ端がそこらにいるから、捕まえて薩摩藩邸まで送らせる。」





私は手早く着物を直して、土方さんと部屋を出た。

階段を下りる時、足下が暗くてちょっとよろよろしている私を見て、土方さんが手を取ってくれた。



「…なんだかな。」

「え?」

玄関を出たところで、ばつが悪そうに頭をかいて土方さんが呟く。

「おまえといると調子が狂っちまう…。」

ふたりで路地を歩きながら話をした。

「なぁ。名無し。」

「……はい。」

「おまえ、本当に薩摩の人間なのか?」

「………。」

「ひょっとして…」

そう言って、私の顔を覗き込む土方さん。


か、顔近い!!って…!

って、さっき…さんざんキスしたんだけど…。


「///…な、なんですか…?///」



「おまえ、アレだ…。もののけだろう?」


「Σも、もものけ!?」

「もーのーのーけ!!ったく…阿呆か、なにがもものけだ。」

呆れたように笑うと、土方さんは私の耳にかかった後れ毛をすくって耳に掛けてくれた。


しばらく歩くと大きな通りに出た。


「どうして?」

「んー?」

「どうして今日は許してくれたんですか?」





…俺も焼きが回っちまったのか。

なんだかこいつといると、変に慈悲深い里親みたいな気分になっちまう。

っつたく、捨て猫じゃあるまいしよ。



「どうして今日は許してくれたんですか?」

上目遣いで名無しが俺に聞く。


「んー?だってよ。おまえ、考えてもみろ。今日のおまえは岡田以蔵に人質に捕られて、刃物は突きつけられるわ、挙げ句に俺に出会い茶屋に連れ込まれて襲われるじゃ、洒落になんねえだろうが。」


そう言い放った途端、名無しのやつ、今までさんざ、訝しそうな目で人のことを見ていたくせに

その表情はパーッと、明るく変わってニッコリ笑い、俺の腕に抱きついて、こう言い放った。



「そっかぁ。やっぱり土方さん優しいから、大好きです!」




……俺は昼間っからもののけに、心臓に悪い夢を見せられているような気分だった。








あとがき


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