Amaretto
□鬼より怖い優しい彼
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そういうと、土方さんは私から身体を離した。
「今日のところは勘弁してやる。」
「…土方…さん。」
「着物を直しな。」
そういうと立ち上がると、私に背中を向けてドカッと胡座をかいて座った。
「途中、うちの下っ端がそこらにいるから、捕まえて薩摩藩邸まで送らせる。」
*
私は手早く着物を直して、土方さんと部屋を出た。
階段を下りる時、足下が暗くてちょっとよろよろしている私を見て、土方さんが手を取ってくれた。
「…なんだかな。」
「え?」
玄関を出たところで、ばつが悪そうに頭をかいて土方さんが呟く。
「おまえといると調子が狂っちまう…。」
ふたりで路地を歩きながら話をした。
「なぁ。名無し。」
「……はい。」
「おまえ、本当に薩摩の人間なのか?」
「………。」
「ひょっとして…」
そう言って、私の顔を覗き込む土方さん。
か、顔近い!!って…!
って、さっき…さんざんキスしたんだけど…。
「///…な、なんですか…?///」
「おまえ、アレだ…。もののけだろう?」
「Σも、もものけ!?」
「もーのーのーけ!!ったく…阿呆か、なにがもものけだ。」
呆れたように笑うと、土方さんは私の耳にかかった後れ毛をすくって耳に掛けてくれた。
しばらく歩くと大きな通りに出た。
「どうして?」
「んー?」
「どうして今日は許してくれたんですか?」
*
…俺も焼きが回っちまったのか。
なんだかこいつといると、変に慈悲深い里親みたいな気分になっちまう。
っつたく、捨て猫じゃあるまいしよ。
「どうして今日は許してくれたんですか?」
上目遣いで名無しが俺に聞く。
「んー?だってよ。おまえ、考えてもみろ。今日のおまえは岡田以蔵に人質に捕られて、刃物は突きつけられるわ、挙げ句に俺に出会い茶屋に連れ込まれて襲われるじゃ、洒落になんねえだろうが。」
そう言い放った途端、名無しのやつ、今までさんざ、訝しそうな目で人のことを見ていたくせに
その表情はパーッと、明るく変わってニッコリ笑い、俺の腕に抱きついて、こう言い放った。
「そっかぁ。やっぱり土方さん優しいから、大好きです!」
……俺は昼間っからもののけに、心臓に悪い夢を見せられているような気分だった。
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あとがき
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