Amaretto

鬼より怖い優しい彼
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こいつの突然の行動に面食らったのも正直な話しだ。

しかし、今となっては俺に『本気だ』なんて真剣な目で言う名無しに、腹が立っていた。

何にもわかっちゃいねえ、お嬢の戯言。

鼻っ柱だけは強い…我が儘で高貴で、虫一つ殺したことなんざあない綺麗な顔を歪ませてやりたい。

上等な着物に身を包んだ、生意気で世間知らずの…

ただ大久保に囲われて、蝶よ花よで暮らしているこの娘を、俺の手で穢してやりたい衝動だった。



「着物を脱げ。」




土方さんに放り込まれた部屋には、布団が一組だけ敷かれてあった。

それを見た瞬間、私はここがどういう所なのかがわかった。

…ここって…、つまりラブホだよね…。

そう思って、土方さんを見ると

「自分じゃ脱げねえか?だったら、俺が脱がしてやる。」

そう言って、乱暴に着物の合わせを押し広げられる。

「いやあ!」

「本気なんだろ?だったら、今すぐここで俺の女になりやがれ。」

そのまま、布団に押し倒され首筋をキツく吸われたまま、帯を解かれる。

「いやっ…いやいや!土方さんっ…や、やめてください…っ」

「くち、塞ぐぞ。」

そう言うと土方さんは私に乱暴にキスしてきた。





「ん…ん…ん!」

俺は名無しに口吸いしながら、乱暴に着物を脱がした。

名無しは俺に組敷かれた下で、俺を叩きながら必死になって着物を脱がされないよう抵抗する。

たかが華奢な女の抗いだったが、本気で嫌がって暴れている名無し。

おい…。俺にここまで抵抗するか?

いくら無理矢理とはいえ、この俺だぜ?

俺の接吻は他の男とは全然違うと何人の女に言われたか…

「!」

痛みを感じて唇を離すと、名無しは俺に噛み付いたのか、血の味が口の中に広がった。

手のひらで拭うと鮮血が付いていた。

「はっ。なるほどな。」

「はぁ…はぁ…」

「おまえの本気なんて、これっぽっちのもんじゃねえか。」





あんなに優しかったのに、今の土方さんは怖くて意地悪だった。


「大抵の女は俺に抱かれりゃ、その下でひぃひぃ悦ぶんだぜ…お嬢さんよ。あんたの本気なんてこんな程度のものなんだろ?」

…あんなに会いたくて、やっと会えたのに…今の土方さんは私が知ってる優しい土方さんじゃない。

「………。」

悲しいのと怖いのとで涙がとまらなかった。

ただ、わかったこと…

私は土方さんを好きになっちゃいけない人間なんだ。

そう思うと悲しくて、涙がポロポロと溢れ落ちた。



「もう、いい。」

「……。」

「もう、いい、興が醒めた。」

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