Amaretto
□告白のあと
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薩摩が仰せつかっている家茂公の警護に、要員を貸し出す話し合いで今日は来たが…。
まさかそのあと、名無しを紹介されるとは…。
「何処まで本当なんだろうな?とし。」
「本当、というと?」
「さっきの大久保さんの話しだよ。姉の嫁ぎ先の遠縁なんて言ったら、ほとんど他人だ。一体、なんの為に我々に会わせたのか…?」
「ははは。近藤さん、そりゃ簡単ですよ。何度かあの娘は土方くんに声を掛けられている。大久保さんが手を出すなと牽制してきたと踏んで、間違いないでしょう。」
伊東さんがおもしろがって揶揄する。
「冗談じゃない。こちとら掃いて捨てるほど女には不自由しちゃいない。そんなもんはいらぬ心配ごとですよ。」
「まあ、どのみちあちらはお姫さまだ。嫌われ者の新撰組には縁のない話じゃないか。あっはっは。」
近藤さんがそう笑い飛ばす。
…しかし、いったい何だってんだ。大久保のやつ。
以前から虫が好かないとは思っていたが…あの娘、名無しを娶るつもりなのか?
そんなことをいちいち匂わせてなんになる?
そうだとしても、俺にはなんの関係もないことだ…。
*
土方さんが出て行ったあと、大久保さんと部屋でふたりきり
になった。
「大久保さん…さっきの話しって…。」
「これで心置きなく神社を探すことができるだろう。寺田屋にいたらそれも叶わぬことだ。少なくともこの薩摩藩の縁者で通れば、新撰組も見廻り組も疑ってはこない。」
やっぱり…!そうだったんだ。
なんか…大久保さんって、すごい…。
そう思って、嬉しくて大久保さんを見つめていると、おもむろに身体をこちら側に向けて、大久保さんが呟いた。
「小娘。」
「はいっ?」
「…小娘、おまえは隙があり過ぎる。」
「すき…ですか?」
んんん…!?
今キラキラして目で大久保さんを見てたのに、雰囲気が変わってきた?
なんか目が怒ってるし…。多分、こないだ総司さんに会ったことも半次郎さんから聞いてるんだろうな…。
お、お説教かも…?
びくびくしている私に大久保さんはふっと笑って、人差し指でおでこを突いた。
「いたっ!」
「ふん。しょうがない。今日の小娘は“愛くるしい”らしいから、これで許してやる。」
そういうと、大久保さんはくっくと笑った。
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