Amaretto
□大人の男
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大久保さんが帰ったその夜。
私は今日土方さんや総司さんに会ったときのことを、皆に詳しく話した。
特に武市さんは
「できる限りそのときのことを詳細に教えて欲しい。」
と言うので、覚えている限り詳しく話した。
「名無しさん、ありがとう。」
「それにしても姉さんに目をつけるとは…。土方や沖田もさすがに目が鋭いっスね…。」
「これだけ珍妙だと、新撰組じゃなくても目につくだろ。」
「姉さん…言いにくいんスけど、もうなるべくそのふたりとは会わないほうがいいっスよ…。」
うん…。皆の様子を見て、だいたいの事情はわかる…。
つまり、土方さんや総司さんは皆とは志が大きく違っていて、簡単に言うと敵同士だってこと。
「まぁまぁ。そうやって簡単に結論づけるのは、誰でもできることじゃ。問題は名無しさんがどうするかであって、そこまでわしらが名無しさんの行動をどうこう条件を付けていいというもんでもなかろう。」
「龍馬。おまえ、そんな呑気なこと言うけど、こいつの無鉄砲さがわかって言ってるのか?」
「いや、僕も龍馬の意見に賛成だ。名無しさんは何でも顔に出てしまうから、かえって接触するなと言ってしまうと、萎縮して向こうに怪しまれる。」
「う〜ん…確かに向こうは姉さんと俺らが知り合いだってことは、わかってないっスからね…。ひとりでいるときは、かえって変に警戒しないほうがいいかもしれないっス。」
「どうじゃ?名無しさんはどうしたいかの?」
うん…。
できるできないじゃなくて、私にはやるしかない。
「はい。…私、ほんとすぐなんでも顔にでちゃうし、土方さんたちとなるべく接触しないように気をつけます。」
そう、龍馬さんたちと約束した。
____次の日。
「ああっ、名無しちゃん。えろう悪いんだけど買い忘れて来たものがあるんやけど、買うて来てくれるか?」
女将さんに言われて
「あ!はい、わかりました。いってきます!」
私は元気よく寺田屋を出て、宝積屋さんというお饅頭屋さんにお饅頭を買いに行った。
「あれ、またおまえ__。たしか、名無しと言ったか?」
ん?このいい声は…?
「ひ、土方さん!////」
き、昨日の今日でまた会っちゃった…。
ど、どうしよう…緊張しないで普通にやり過ごさなきゃ…。
「よく会うな。__ん?おまえ、どうした?顔が赤いぞ?」
今日は土方さんは昨日の着物とは違う、綺麗な水色の羽織に額にははちまきのようなものをしていた。
「熱でもあるんじゃねえか?」
そう言って、私のおでこに手をあててきた土方さん。
「////っ!!」
「ん、熱はねえ。なんだ、今日もお使いか?」
「///はい!そこのお饅頭屋さんにっ!お饅頭をっ!」
「ふーん、そうか。そうだ、おまえこの手配書に載っている人物、見たことないか?」
え?…いやな予感…。
土方さんが広げた紙にはにょろにょろと書かれた文字と下手くそな似顔絵が描いてあった。
「どうだ?見たことあるか?」
「…………これって、だれなんですか?」
「これは天下の極悪人、岡田以蔵と坂本龍馬だ。」
…や、やばい…。
なんか吹き出して笑いそうになって来た。