Amaretto
□鬼より怖い優しい彼
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初めてのキスが自分からって、
そんな女の子って、どのくらいいるんだろう?
「!」
私は思わず自分の唇で土方さんの唇に触れていた。
そっと触れるだけ…
それが今の私には精一杯だった。
突然のことに土方さんは少し驚いて身体を離した。
「…名無し、どうした?」
優しくて、大人で、でも少し艶を帯びたその言い方で覗き込むように、土方さんは私の顔を見る。
「…わかりません。でも、私、ずっと土方さんに会いたかったの。」
「………名無し。」
つぎの瞬間
*
俺は名無しを引き寄せ、接吻を返した。
頭に手を当てて、強く抱きしめながら甘い温かな唇を吸った。
理屈なんてどうでもいい、今、目の前にコイツがいて俺に口付けた。
だから俺も返した。
小さく尖った顎に手をあてて少し口を開けさせ、舌を差し込む。
戸惑って身体をやや引いた名無しをしっかりと抱え込み、夢中で貪った。
「ん…はぁ。」
俯いた名無しの額に自分の額を付けて言う。
「おまえは、大久保のイロなんかじゃないんだろ?」
名無しはこくんと頷いた。
俺の両手の中で震える肩に力を込めて、もう一度接吻する。
「ん…ぁ…。」
たどたどしく俺の舌に名無しの舌が絡まり、甘い香りのする唇が俺を煽った。
しかし…。
腕の中で、小刻みに震える名無しに気付いて、俺は唇を離した。
おもむろに身体を離すと名無しを立たせてわざと、素っ気なく言う。
「遊びは終いだ。」
*
「…!」
あそび?
「わ、私は本気です。」
思わず土方さんにそう言い返す。
「土方さんが、あそびでも…私は本気なんです!」
「…おまえ、覚悟ができててそんなこと言ってるのか?」
「か、覚悟って…?」
「こういうことだ。」
そう言うと土方さんは、私を強引に路地に引っ張って行った。
「い、いたいっ!土方さんっ!」
そのまま、路地を進んで行き止まりのところに一軒家があった。
玄関を開けると、中年の女の人が出て来て土方さんはぶっきらぼうに
「二階、使うぞ。」
とだけ告げ、私を連れてずんずん上がって行く。
「こ、ここって…何処なんですか…!」
「おまえがどんだけの覚悟があんのか、見てやるよ。」
と、言って廊下の一番奥の部屋の襖を乱暴に締めた。
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