Amaretto

鬼より怖い優しい彼
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初めてのキスが自分からって、

そんな女の子って、どのくらいいるんだろう?






「!」

私は思わず自分の唇で土方さんの唇に触れていた。

そっと触れるだけ…

それが今の私には精一杯だった。

突然のことに土方さんは少し驚いて身体を離した。

「…名無し、どうした?」

優しくて、大人で、でも少し艶を帯びたその言い方で覗き込むように、土方さんは私の顔を見る。

「…わかりません。でも、私、ずっと土方さんに会いたかったの。」

「………名無し。」

つぎの瞬間





俺は名無しを引き寄せ、接吻を返した。

頭に手を当てて、強く抱きしめながら甘い温かな唇を吸った。

理屈なんてどうでもいい、今、目の前にコイツがいて俺に口付けた。

だから俺も返した。

小さく尖った顎に手をあてて少し口を開けさせ、舌を差し込む。

戸惑って身体をやや引いた名無しをしっかりと抱え込み、夢中で貪った。

「ん…はぁ。」

俯いた名無しの額に自分の額を付けて言う。

「おまえは、大久保のイロなんかじゃないんだろ?」

名無しはこくんと頷いた。

俺の両手の中で震える肩に力を込めて、もう一度接吻する。

「ん…ぁ…。」

たどたどしく俺の舌に名無しの舌が絡まり、甘い香りのする唇が俺を煽った。



しかし…。

腕の中で、小刻みに震える名無しに気付いて、俺は唇を離した。

おもむろに身体を離すと名無しを立たせてわざと、素っ気なく言う。

「遊びは終いだ。」





「…!」

あそび?

「わ、私は本気です。」

思わず土方さんにそう言い返す。

「土方さんが、あそびでも…私は本気なんです!」

「…おまえ、覚悟ができててそんなこと言ってるのか?」

「か、覚悟って…?」

「こういうことだ。」

そう言うと土方さんは、私を強引に路地に引っ張って行った。

「い、いたいっ!土方さんっ!」

そのまま、路地を進んで行き止まりのところに一軒家があった。

玄関を開けると、中年の女の人が出て来て土方さんはぶっきらぼうに

「二階、使うぞ。」

とだけ告げ、私を連れてずんずん上がって行く。


「こ、ここって…何処なんですか…!」

「おまえがどんだけの覚悟があんのか、見てやるよ。」

と、言って廊下の一番奥の部屋の襖を乱暴に締めた。


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