Amaretto
□とどかないおもい
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「ふーん。おまえ…名無し、だっけ?最近京都に来たんだ。」
目の前で目をまんまるにして、そう話す同い年くらいの男の子、平助くんはそう言った。
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さっき…
私が甘味屋さんの店先の長椅子の上で、土方さんに介抱してもらっていた時、たまたまこの平助っていう男の子が通り過ぎて
「Σふ、副長!?ナニしてんですか??」
「ああ、こいつをさっき拾ってな。鼻血を出してるから介抱してやってるんだ。」
そう、平然と答える土方さん。
「い、いやあ…。俺、まずいもん見ちまったかな。」
「ふっ。馬鹿野郎。俺はこんながきゃあ相手にしねえよ。」
ん?がきゃあ?どういう意味??
「それより、副長!先ほど近藤さんがお戻りになられました!」
思い出したようにその平助くんが勢い良く伝える。
「なに?予定より随分と早いな…。わかった。すぐ戻る。」
「おい。もう大丈夫か?」
土方さんはそう言って、私の頭を抑えて顔を覗き込んだ。
「はい。大丈夫です。ですから土方さん…行ってください。ほんとう、ありがとうございました。」
「おい、平助。俺は行くから、ちょっとこいつを見てやってくれ。」
「え!俺ですか?…い、いいっすけど。」
「頼むな。シケ込むなよ。」
「は〜!?土方さんじゃあるまいし…!勘弁してくださいよっ!」
「くち」
「と、閉じます!」
そういうと、土方さんは
「しばらくここで休んでいけ。必要ならばこいつに家まで送ってもらえ。いいな?」
と私の目を見て言って、去って行ってしまった。
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あれからしばらくたって、鼻血も完全に止まり、起き上がって平助くんと少し話をした。
「名無し、おまえって、もしかして土方さんのイロなのか?」
「えっ?イロって、なんですか?土方さんとは昨日、初めてお会いしたばかりです。さっき偶然、お会いしたんです。」
「そっか…。しかしびっくりしたよな〜。おまえ、土方さんと言えば『泣く子も黙る、新撰組の鬼の副長』なんだぜ?その土方さんに介抱されてるって…。」
「土方さんって、鬼って呼ばれてるんですか?」
「ああ、あんな怖い人いねえよ。」
「でも優しいですよ?」
「うーん?おまえがガキだからかなぁ?」
ガキ…。さっきのがきゃあって、そういう意味!?
そう言われてちょっとムキっと目を剥くと、私をまじまじ見て平助くんが言った。
「うん?でもおまえ可愛い顔してるし、この先はわかんねえよ。」
「え?」
「あの人、なんでも喰っちゃうからさ。」
そういうと平助くんは、いたずらっぽく片目を瞑った。
「そうは言っても土方さんは女のモテ方は半端ないからな。」
やっぱ、そうなんだ。
「土方さん、かっこいいですもんね…。」
「はは。かっこいい?って、なんだ?」
「ええっと、男らしくて、素敵って意味です。」
「ふふ。おまえ変わってるな。そんなこと土方さんに言ったら、すぐさま連れ込まれちまうぜ?」
まぁ、気をつけなよ。というと平助くんは笑いながら、行ってしまった。
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