Amaretto

とどかないおもい
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「ふーん。おまえ…名無し、だっけ?最近京都に来たんだ。」

目の前で目をまんまるにして、そう話す同い年くらいの男の子、平助くんはそう言った。

**

さっき…

私が甘味屋さんの店先の長椅子の上で、土方さんに介抱してもらっていた時、たまたまこの平助っていう男の子が通り過ぎて

「Σふ、副長!?ナニしてんですか??」

「ああ、こいつをさっき拾ってな。鼻血を出してるから介抱してやってるんだ。」

そう、平然と答える土方さん。

「い、いやあ…。俺、まずいもん見ちまったかな。」

「ふっ。馬鹿野郎。俺はこんながきゃあ相手にしねえよ。」

ん?がきゃあ?どういう意味??

「それより、副長!先ほど近藤さんがお戻りになられました!」

思い出したようにその平助くんが勢い良く伝える。

「なに?予定より随分と早いな…。わかった。すぐ戻る。」

「おい。もう大丈夫か?」

土方さんはそう言って、私の頭を抑えて顔を覗き込んだ。

「はい。大丈夫です。ですから土方さん…行ってください。ほんとう、ありがとうございました。」

「おい、平助。俺は行くから、ちょっとこいつを見てやってくれ。」

「え!俺ですか?…い、いいっすけど。」

「頼むな。シケ込むなよ。」

「は〜!?土方さんじゃあるまいし…!勘弁してくださいよっ!」

「くち」

「と、閉じます!」

そういうと、土方さんは

「しばらくここで休んでいけ。必要ならばこいつに家まで送ってもらえ。いいな?」

と私の目を見て言って、去って行ってしまった。

**

あれからしばらくたって、鼻血も完全に止まり、起き上がって平助くんと少し話をした。

「名無し、おまえって、もしかして土方さんのイロなのか?」

「えっ?イロって、なんですか?土方さんとは昨日、初めてお会いしたばかりです。さっき偶然、お会いしたんです。」

「そっか…。しかしびっくりしたよな〜。おまえ、土方さんと言えば『泣く子も黙る、新撰組の鬼の副長』なんだぜ?その土方さんに介抱されてるって…。」

「土方さんって、鬼って呼ばれてるんですか?」

「ああ、あんな怖い人いねえよ。」

「でも優しいですよ?」

「うーん?おまえがガキだからかなぁ?」

ガキ…。さっきのがきゃあって、そういう意味!?

そう言われてちょっとムキっと目を剥くと、私をまじまじ見て平助くんが言った。

「うん?でもおまえ可愛い顔してるし、この先はわかんねえよ。」

「え?」

「あの人、なんでも喰っちゃうからさ。」

そういうと平助くんは、いたずらっぽく片目を瞑った。

「そうは言っても土方さんは女のモテ方は半端ないからな。」

やっぱ、そうなんだ。

「土方さん、かっこいいですもんね…。」

「はは。かっこいい?って、なんだ?」

「ええっと、男らしくて、素敵って意味です。」

「ふふ。おまえ変わってるな。そんなこと土方さんに言ったら、すぐさま連れ込まれちまうぜ?」

まぁ、気をつけなよ。というと平助くんは笑いながら、行ってしまった。

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