spin off
□贅沢なしあわせをありがとう
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「私はもともと和食派だし…ケーキより和菓子が好きだし…。」
「自販ではコーヒーやジュースより、いつも日本茶買ってたし…。」
「ファストフードとかもあんまり食べないし…テレビももともと観ない家だったし…。」
ひとりの部屋に寝っ転がって、
あれこれ考える…。
病気もあんまりしないし…。
ま、風邪くらい?
生理痛もないし…。
視力も裸眼で1.2以上だし。
虫歯はなし。
肌も丈夫だからぬか袋とかヘチマ水でバッチリだし。
「いや〜、こうやって考えると私って…なんて丈夫で頑強な女なんだろ…。」
まさにこの江戸時代でも楽々でサバイヴできる手のかからない女っ…!?
「ってか、単純なのかな…?」
なんか気恥ずかしくて、ぽりぽり頭を掻く。
「名無しさま、失礼いたします。」
その時、襖の向こうで
「中岡様が名無しさまにお会いしたいとお見えになっております。」
との、知らせが…。
慎ちゃん…!!!
「あっ…!はい。お通ししてください。」
いや〜ん。慎ちゃん、会いに来てくれたんだあ♪
いや〜、いいよいいよ。
ちょうどヒマしてたしっ。
なんだか…
つまんなかったし…さ…。
「姉さん、おひさしぶりっス。」
「慎ちゃん!ひさしぶり。」
ああ〜、久しぶりに見る慎ちゃん…相変わらず可愛い…。
マスカットみたい…。
「今日は姉さんに渡したいものがあるんスよ。」
そう言って、慎ちゃんの差し出したものは
「あー、かわいい!」
それは朝顔の鉢植えだった。
「朝顔市をやっていたので、姉さんにと思って。」
えー…。
なんか…嬉しくてジーンときちゃう…。
そうなんだよね…慎ちゃんって、こうやっていつでも気遣ってくれて優しいんだよね。
ん…でも…
「ねえ?慎ちゃん?慎ちゃんがこうやってひとりで私を訪ねてくれたのって初めてだよね?」
「え…そうっスか?うーん。ひとりで薩摩藩邸に来る事はあっても、いつも所用で赴きますからね…。うん、確かにこうやって、姉さんを訪ねてってのは、初めてかもしれないッス。」
「そうだよね!私ね、すっごく…すっご〜く嬉しいんだっ。ねぇ、もっとこれからも…しょっちゅう、こうやって私に会いに来てくれる??」
*
え…ね、姉さん。
「しょっちゅうこうやって、会いに来てくれる?」
いやあ〜、
「それは無理っスよ。」
俺はたじろきながら姉さんに言った。
「ど、どうして??」
姉さんは俺に顔を近づけて上目遣いで問いつめて来た。
ねねね…姉さん、顔!顔近いっスよ!こ、こんなとこ大久保さんに見られたらまずいっス!
「ちょっ…、姉さん…。」
俺は姉さんを見つめ返した。
姉さんのその大きくて円な瞳から俺に懇願するような熱い視線を送ってくる。
俺はなんだか気迫負けしてその目線から目を外すことはできず、見つめ返す。
しっかし…。
姉さん…可愛い…。
ゴクリ…。俺は唾を飲み込んだ。
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