spin off

いちゃいちゃするなら
1ページ/4ページ


「利通さん、今からまた漢詩の素読を見てくれますか?」

名無しは私と暮らすようになって、ずいぶんこちらの文字が読めるようになった。

最初のうちは『同じ日本語なのに〜…。にょろにょろで読めません〜。』と嘆いていたが、私から少しずつし教わるようになり、しばらくすると慣れたのかコツを掴んで読めるようになった。

「そんなに私、漢文、好きでもなかったんですよ。でも、利通さんが教えてくれるから、すっごくわかりやすいです!」

「それは当然だ。私は名無しに愛情持って、根気強く教えているからな。」

「ふふっ!ありがとうございます。」

その時、襖の外より来客を知らせる声がした。



「長州藩より、桂様がお目見えになっております。」


ふん…。

呼んでもないのに。

「通せ。」

昨日、忘れてあえて取りには行かなかった扇子が、もう戻ってきたか…。




**


「大久保さん、突然の来訪失礼する。」

「桂さんっ!」

「やあ、名無しさん、こんにちは。」

「昨日は世話になった。して、今日は何の用向きだ?」

「ええ、昨日大久保さんがこちらをお忘れになったので、出先がてら届けにきました。」

そういうと桂くんは、白檀をしたためた私の扇子を差し出した。



ふ…。

それだけではあるまい。

「昨日は名無しさんが見えなかったから、晋作が拗ねてしまって大変だったよ。」

「実は昨日、私…ちょっと具合が悪くて…。大したことないんですけど外出は控えたんです。」

「おやおや。それはもう大丈夫なのかい?具合が悪いって…、お医者には看てもらったのかな?」

「あの…少しお腹が痛くて…でも、お医者様に看てもらうほどのものではないんです…////。」

「?」

「んんん!おほん!桂くん、見ての通り名無しは今日はもう元気だ。次回の会合には連れて行くので、またそのときは頼む。」


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ