spin off
□いちゃいちゃするなら
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「利通さん、今からまた漢詩の素読を見てくれますか?」
名無しは私と暮らすようになって、ずいぶんこちらの文字が読めるようになった。
最初のうちは『同じ日本語なのに〜…。にょろにょろで読めません〜。』と嘆いていたが、私から少しずつし教わるようになり、しばらくすると慣れたのかコツを掴んで読めるようになった。
「そんなに私、漢文、好きでもなかったんですよ。でも、利通さんが教えてくれるから、すっごくわかりやすいです!」
「それは当然だ。私は名無しに愛情持って、根気強く教えているからな。」
「ふふっ!ありがとうございます。」
その時、襖の外より来客を知らせる声がした。
「長州藩より、桂様がお目見えになっております。」
ふん…。
呼んでもないのに。
「通せ。」
昨日、忘れてあえて取りには行かなかった扇子が、もう戻ってきたか…。
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「大久保さん、突然の来訪失礼する。」
「桂さんっ!」
「やあ、名無しさん、こんにちは。」
「昨日は世話になった。して、今日は何の用向きだ?」
「ええ、昨日大久保さんがこちらをお忘れになったので、出先がてら届けにきました。」
そういうと桂くんは、白檀をしたためた私の扇子を差し出した。
ふ…。
それだけではあるまい。
「昨日は名無しさんが見えなかったから、晋作が拗ねてしまって大変だったよ。」
「実は昨日、私…ちょっと具合が悪くて…。大したことないんですけど外出は控えたんです。」
「おやおや。それはもう大丈夫なのかい?具合が悪いって…、お医者には看てもらったのかな?」
「あの…少しお腹が痛くて…でも、お医者様に看てもらうほどのものではないんです…////。」
「?」
「んんん!おほん!桂くん、見ての通り名無しは今日はもう元気だ。次回の会合には連れて行くので、またそのときは頼む。」
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