※死ねた注意


「もし僕が先に死んだとしても、後なんか追ってこないでよね」
そう言って雲雀はニヤリと笑う。
「まぁ、僕が君より先に死ぬはずないけど」
それを聞いて綱吉はハハ、と苦笑した。
「確かに、俺、運が悪いから早く死んじゃうかも…でも雲雀さん」
綱吉は澄んだ目で雲雀を見つめる。
「俺が先に死んでも、後を追ってこないでくださいね」
「何言ってんの。僕がそんな事するわけないでしょ」
「ですよねぇ」
ただの憎まれ口なはずなのに、綱吉の顔はどこかほっとした表情をしていた。それにどこかイラっとして、雲雀は軽く綱吉を殴ったのだった。



あれはいつのことだっただろう。確か、中学生の頃だった気がする。
なぜこんな話になったのか、もう覚えてはいないけれど。あの時は確かに後を追うなんて、考えもしなかったが、まさに綱吉がいなくなってしまった今、綱吉のあの言葉は、雲雀の中に呪いの呪文ように、こびりついて離れなくなった。

ボンゴレ関係者のみでの葬儀の後、埋葬は守護者だけで行った。黒い棺の中で、綱吉は安らかな顔つきで眠っている。雲雀は少し離れた場所で、他の守護者を眺めた。
獄寺は、綱吉の側に跪いてその顔をぼんやりと眺めている。主を失った彼は、誰よりも茫然自失していた。その目の輝きは失われ、頬は痩けている。いつもの威勢はなく、体も心なしか一回り小さく見えた。
そんな獄寺の肩を山本が優しく叩く。昨晩泣き続けたのだろう、目は充血していて腫れぼったい。それを隠すかのように眼鏡をかけている。喪失感を漂わせながら、それでも獄寺の側を離れず、彼を気遣っていた。
了平は、泣き続けるクロームの肩を抱きながら、静かに涙を流していた。彼の白くなるほど強く握られた拳から、悔しさが滲み出ている。確か、今回の綱吉の死は京子には決して漏れないようにしているはずだ。了平は痛む心を隠しながら、京子に苦しい嘘をつき続けるのだろう。
骸は不在だった。どこで何をしているのかは、雲雀も知らなかった。恐らく彼は独自で動いているのだろう。
それぞれに綱吉の死を悲しむ守護者を見て、雲雀はつくづく綱吉は酷い男だと感じた。こんなにも多くの人を悲しませて、嘘をつかせて。思わず、綱吉に掴みかかって問いただしたくなる。

ねぇ。君はほんとにちゃんと生き返ってくれるの。


仮死状態になる弾があることは前から知っていたが、まさか実際に使うことになるとは思わなかった。
綱吉の計画を聞いて、雲雀は眉をしかめた。
「10年前の君たちを連れてくるなんて。あの時代の君たちじゃ、ボンゴレリングを奪われて、殺されるのが関の山だよ」
「なんですか、君たちって。それじゃまるで雲雀さんは大丈夫なみたいだ」
「僕が死ぬと思う?」
「思いません」
雲雀がふん、と鼻を鳴らす。
「とにかく、無謀だよ。君らしくもない」
「もう、過去の俺たちにしか、望みはないんです」
綱吉は困ったように眉を下げて笑った。
「俺がボンゴレリング壊しちゃったから」
「そうだよ。君は昔、これが繋がってる証だ、なんて言っていたものをいとも容易く壊してしまったよね」
「あぁー、そんな事もありましたね。覚えててくれたんですね、雲雀さん」
そう言われて雲雀は眉をしかめた。
「大人になったら君はしたたかになった」
「誉め言葉ですよね」
「誉めてない」
「それでも一緒にいるくせに」
「うるさいよ」
「…あ、あのー…」
それまで二人の痴話喧嘩を黙って聞いていた正一が、恐る恐る口を開いた。




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