蝉の声が耳障りなくらいうるさかった。太陽は一番高い位置から二人の頭を照らす。本当に暑い日だ。
獄寺と骸は、並盛高校の屋上にいた。正午の申し訳程度の日陰を奪いあうように壁にくっついて座っていた。こんな暑い日に、学校の屋上にいるなんて自殺行為に近いが、この学校の生徒ではない二人が長居できるのはこの場所しかなかった。
二人が落ち合うのはいつもここだった。獄寺は、放課後綱吉を迎えに行けるという便利さからここを選んだのもあるが、二人の目的の人物が同じくこの学校へ通っているのが最大の理由だった。
「君、こんなに暑い日にスーツを着るなんて馬鹿げてますねぇ」
骸は冷たいアイスを食べながら、書類でバタバタ扇いでいる獄寺を見た。
「仕方ねぇだろ。これから雲雀と出掛けるんだよ」
「おや、やっと資金繰りの目処がたちましたか」
「あいつのあの横暴さ…清々しいくらいだ」
「…恐らく君も同じくらい横暴ですよ」
雲雀と獄寺。ボンゴレきっての凶暴ペアに脅されるどこぞの社長に、ほんの少しだけ同情した。
「お前は、この間頼んでたやつ、調べたのかよ」
「もちろん調査済みですよ。そうでなければこんな炎天下のした屋上なんかにいません」
獄寺はスーツのポケットに入れてあるタバコを取り出し火を付けた。フーッと煙を吐くとぼんやり空を眺めた。
「しかし君といい雲雀恭弥といい、そんなに沢田綱吉が大切ですか」
「当たり前だ。こうやって協力してる時点でお前も同じだろ」
「馬鹿言わないでください。僕はただ興味があるだけですよ。君たちのしようとしている事に」
獄寺はまたタバコの煙を吐いた。

俺達のしようとしている事、か。

ちら、と横にいる骸を見ると、溶けそうなアイスを一生懸命頬張っている。
マフィアの殲滅を望む骸と、ボンゴレを継ぎたくない綱吉の望みは、根本では同じかも知れない。二人ともマフィアという存在に人生を左右されている。
獄寺と雲雀の企みは、ボンゴレ消滅に限りなく近い事だから、骸も興味を持ったのだろう。

でも、なぁ。

正直獄寺は、ボンゴレを否定する事には消極的だった。綱吉が、ボンゴレを継ぎたくない、と言う度に胸が痛んだ。だって。それは。
「君が今何を考えているか、当ててあげましょうか」
不意に骸が口を開いた。口元には厭らしい笑みが浮かんでいる。獄寺はギクリと固まった。
「君は、ボンゴレの輪郭が薄れることを恐れていますね」
獄寺は舌打ちをしそうになった。こういう時の骸はやたら勘がいい。



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