「君は元々、沢田綱吉の嵐の守護者として日本に来ましたからねぇ。彼がボンゴレ継承を否定する事で自分の存在意義も否定されている気になっていませんか」
獄寺は、ハーッと息を吐いた。あまりにもその通りすぎて、ぐうの音も出なかった。綱吉がボンゴレを継がない、イコール自分の守護者としての役目も終わりということだ。そうなれば、獄寺が日本に残る意味もないし、綱吉の側にいる理由も見当たらなかった。
「クフフ…そう思い込んでいるのは君だけだと、分かりませんかねぇ」
「あぁ?」
くわえタバコのまま骸を睨むと、アイスの最後の一口を飲み込んだ骸が続ける。
「沢田綱吉は、とうの昔から君を一人の人間として見ています。ボンゴレと切り離したところから、君を受け入れているんですよ」
君が急にイタリアに帰ったら、彼は悲しむでしょうねぇ。骸が歌うように言った。
「もっとも、イタリアに帰ったところで、君の居場所などないんでしょうが」
それまで黙って聞いていた獄寺が口を開いた。
「分かってるよ。10代目が俺を、守護者としてではなく、…と、友達として見てくださっていることは」
そういう人だからこそ、自分はあのお方についていくと決めたのだ。
「でも俺にとっては、やっぱりあの方はボンゴレの10代目であって、あの方の右腕になる事が俺の生涯の目標なんだよ。…完全な自己満だとしてもな」
俺の一生の生き甲斐を、そう簡単には捨てきれない。
「…熱いですね」
「俺が自分自身を大切にしようって思えたのも、10代目のお陰だからな」
「…そうですか」
骸は、こんなにも獄寺に慕われている綱吉が羨ましかった。心の中にメラメラと嫉妬が芽生えそうで、ギュッと拳を握った。
「まあそれに」
獄寺が、骸の固く握りしめた拳を意地の悪い目で見ながら笑った。
「俺がいなくなったら、お前が泣くからな」
「なっ、にをほざいているんですかっ」
「泣きながら俺のこと探し回んだろ」
 獄寺はニヤニヤと真っ赤になっていく骸の顔を見た。
「僕は君のこと探したりなどしませんよ!大体なんで僕が君のために泣くんですか!」
 獄寺はへっ、と笑うと、タバコを地面に投げ捨てて足で踏みつけた。
「僕は君を探しませんよ」
 骸がポツリと繰り返した。
「僕は君がいなくなりそうになったら、先に察知して付いていきます」
「は」
 獄寺が鼻で笑う。
「君が死んでしまったら、」
骸は獄寺を真正面から見て言った。
「来世まで追いかけますよ」



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