隠し部屋

□美味しい関係
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「しょーちゃ…、しょーちゃん。
息、はいて」


頬をやんわり叩かれて、初めて自分が呼吸を止めていたことに気づく。


「……っ、は…ぁ」


鼻先が触れそうに顔を近づけた相葉が何度も髪を撫で、額や瞼に口付けながら囁く。


「…そう。ゆっくり吐いて。
力、抜ける?」

「ハァ…、ん…っ」


うっすら目を開けば、相葉が眉間にしわを寄せていた。


ああ…。俺が上手に力を抜けないと中のコイツも痛くてキツいんだよなあ…。

そうは言っても。
ここを遣り過ごせば、後はゆっくり溶けていくように快感を拾えるようになる。
わかってんだけど。


「しょーちゃん…」


前を宥めながら、俺が落ち着くまで動かないでいてくれる。


「なあ…」

「ん?」

「もっと……キス」


伸ばした腕を自分の首に絡めさせ、深く唇を合わせてくれる。


「ん…ッ、ん…」

痛みも違和感のような苦しさも過ぎた。
次第に優しいキスだけでは物足りなくなる。


もっと欲しい。

もっと深く。
もっと激しく。
もっともっと奥まで…。


「しょーちゃん…腰、動いてる」

戯れに胸の尖りを弄りながら、相葉が耳元で囁く。

「エッチだなあ。
ねえ、どうして欲しいの?」

「は…あっ…、もう…」

「もう?なに?
ちゃんと言ってくんないとわかんない」


わかってるくせに知らぬフリで、相葉は体を起こすと俺の膝を掴んで大きく広げる。


「凄いよ、しょーちゃんのココ…。
おれの、美味しそうに全部飲み込んでる」


ああ…くそっ。殴りたくなってきた。
言葉責めとか、どこで覚えてきてんだコイツ。

つい最近まで
「しょーちゃん、しょーちゃん」
って、弟みたいに懐いて甘えてきてたのに。

いつの間にこんな…。
手管を使って翻弄するような。
艶っぽい視線でゾクゾクさせるような。
大人のオトコになったんだろう。


(覚えてろよチクショ…)


心の中で毒づいてみても、限界にきてる欲求には勝てるはずもない。


「う…ごいて…。はやく…っ」


「…オッケー。
いっぱい声出してね?」

相葉はスゥッと目を細めて綺麗に笑った。









「やっぱエッチしてるときのしょーちゃんが最強に可愛い」

「…セックスのときのお前は最高に性格悪いな」


昇りつめてあと少しというところで何度焦らされたか。


「イカせて…とかって。
もぉマジ可愛かった。携帯に録音しとけばよかったー」

「調子にのんな」


お前が言わせたんだろうが。

意地悪く俺を追い詰めていたヤツが、身体を繋げたまま今はデレデレと見下ろしてくる。
正気に戻ってしまったらもう恥ずかしくて目線を合わせられない。



「抜け。早く」

「うははっ。
終った途端にもう通常モードのしょーちゃんだ」


そっちこそ最中とは別人のようにいつもの「相葉ちゃん」の顔に戻って、俺の上から降りる。

「シャワー借りるね」と向けた背中を踵で蹴った。


「いって!」

「…誰が終りだなんて言った?」


人のこと散々煽りやがって。
身体の奥でまだ熱が燻っててどうしようもねえんだよ。



「俺は明日オフだって知ってるよな。
…一回で済まそうなんて思うなよ」


相葉は驚いた顔で振り返る。


「しょーちゃん…」

「…なんだよ」

「いいの?
そんなスゴイこと言われたら、おれもっと欲張っちゃうよ?」


何回も言わせんな。
もっとお前が欲しい。…足んねえよ。


「丸飲みしちゃうかも」

「ははっ、やれよ。
その代わり満足させろ」

「…いいね。そうこなくっちゃ」


ギシリ、とベッドのスプリングを軋ませて、相葉がまた俺の上に戻ってくる。

臀部から太股にかけて細い指がいやらしい仕草で滑っていく。
そんな柔らかい愛撫だけで吐息が熱くなる。


「しょーちゃん…」

「ん、…あ……っ」

同じくらい熱っぽい吐息で耳元に囁かれる。


「そういうギラギラしたとこも好きだよ。昔から」


…またそうやって調子のいいこと言って俺を喜ばせる。


(調子にのるなっての)

 



 
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