隠し部屋

□知りたい 知りたくない
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翌日から全身筋肉痛に見舞われ、それがようやく治まった頃。

今日の雑誌の取材はニノと二人だった。



「あ、そう言えば翔ちゃん。
誕生日、どうだった?」

「え」


メイク後の待ち時間。
ゲームに夢中になっていると思っていたニノから何気なく発せられた『誕生日』というワードについドキッとしてしまう。


初めて相葉と…一線を越えた。

その事をニノが知っているはずないのに。


「どうって…別に」

「あれ。別に、って感じだったの?」

ニノが手に持つゲームから顔を上げた。


「あの日さ、俺その後予定とかなかったし、せっかくだからメシでもどうかなって誘おうとしたんだけど」

そしたら相葉さんがさ…。
ニノは急に口元を手で覆って吹き出す。

「おれがしょーちゃんのお祝いするんだから、お前らはダメって。
もうびっくりするぐらいの勢いでで言うもんだからさ、どんだけ凄い誕生日パーティーをしたのかと思ってたんだけど」


まあ……、ある意味凄いよな。

押し倒されてバックバージンを奪われるという、衝撃的な記念日になったわけだから。

嬉しいんだけど、何しろ心の準備が出来てなかった。

ただ口が裂けてもそんなこと言えるわけないから。

「…あいつも仕事終わりで遅かったし、まあ簡単に?」



「ねえ翔ちゃん」

ニノがぱたんとゲームをテーブルの上に置いた。

珍しい。
大事な打ち合わせの時ですら離さないでいたりするのに(内容がしっかり頭に入っているあたりが凄いけど)

それでついゲーム機に気を取られたら、可愛い顔を傾けて覗き込むようにオレを見る。


「間違ってたらごめんね。
翔ちゃん、相葉さんのことが好きだよね?恋愛的な意味で」

「えっ」

「そんで、なんかイイ感じになっちゃってるよね?」


柴犬と評される黒く艶々した目に見つめられたら、誤魔化す言葉が浮かんでこなかった。
それに…。


「…お前には勘づかれてると思った」

ゲームから片時も目を離さないくせに、どこで見ているんだろう。

ため息をついたら、だって、とニノが笑う。


「翔ちゃんは正直だからね。顔が」

「うっ…」


そんなにダダ漏れだったのか…。
まあ本人にもバレてたし。
ポーカーフェイスって難しいんだな。
この目の前のハリウッド俳優に教えを乞いたいもんだ。


それより、懸念すべきはバレるかバレないかではなく。


「ごめんな。気持ち悪いよな」

「そんな風には思ってないって。
ただちょっと意外だったかな」

「…何が?」

「翔ちゃんってオフのスケジュールもきっちり管理してるような人でしょ。
相葉さんみたいな人生行き当たりばったりみたいな人をどうして好きになったのかなって」

「あー…」


ホント、どうしてだろう?

確かに、仕事でもオフでも細かく時間を割り振って動くことが多い。
その方が気分的に落ち着く。

100%思い通りになっていなくても、人生プランもなんとなく描いてきた。


同性であるメンバーに恋をしてしまったのは想定外。
欲が出ないわけではないけど、気持ちに蓋をして諦める覚悟は最初からあった。

いつか振り返って思い出した時、ほんの少し胸が痛くなる程度の懐かしい記憶になるまで、ずっと封印しておくつもりだったのに。


オレのプランは当の本人によっていとも簡単に崩された。

 
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