Story

□My color
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「おいネリエル、今日放課後ちょっと付き合え」


そう言うノイトラに連れられ放課後ネリエルが来たのは、学校から少し街に出たところにあるブティックだった。


「服、買うの?」
「まあな」


ネリエルはどちらかというと服に無頓着であった。平日は学校なのでほぼ制服で過ごしているし、休日に着る私服は派手でも無くかと言って地味でも無くブランドにこだわるでも無くその辺に売っている可愛いと思った服を買ってきて着ているといった風だった。


それとは正反対にノイトラは服に関して結構なこだわりがあるようだった。


制服のブレザーの中には規定のものではなく自分でどこかで買ったと思われるよく似合うベージュのカーディガン、時には柄物のパーカーを着ていたりする。ネリエルは規則は守る方なので制服の着崩しは好きではないのだが、ノイトラの着崩し具合はどこか彼の美的センスを感じた。


ネリエルがノイトラと2人きりで出かけることは初めてでは無い。休日に出かけたことが何度かあるが、制服だけではなく勿論彼の私服の着こなし具合にネリエルはいつも感心させられる。所謂オシャレ男子。


ノイトラの私服は基本流行りに乗っている。ノイトラが流行流行とうるさいわけではないが、ネリエルが興味本位で買った雑誌などで見るメンズ服は既にノイトラが着ているのを見たことがあるということがたくさんあって不思議だった。一体彼はどうやって流行を知るのだろう。


今日は学校だったので制服だが、今日のノイトラはブレザーの中に見ているだけで温かみのある赤いカーディガンを着ていた。


ネリエルはそんな彼のこだわりが好きだった。


いや、彼だからこそ、彼の好きなものに興味があり、そして彼の好きなものをもっと知りたい、のかもしれない。そんな願望がいつもネリエルの中にあった。


「今日は何を買うの?」

「ちょっと待ってろ」


ここだったか、そう一人言を言いながら彼がネリエルの前に持ってきたのは、黒いパーカーと緑色のパーカーだった。


「この前来た時にどっちにするか迷ってよ、結局買わねェままだったんだ。売り切れちまう前に買うっきゃねェと思ってな。」

「どちらも買ったらいいんじゃないかしら」

「あァ?お前馬鹿かよ。このブランドだぜ?一着いくらすると思ってんだよ。」


ネリエルは先程書いたように服に無頓着で増してやブランドなどメジャーなものしかわからなかった。そう考えると、ああ、こんなところでも彼との間に溝ができていくのか。と、なんだか悲しくなった。


「ごめんなさいね、ブランドはよく知らなく「俺に似合うほう選べ」


ネリエルが正直な気持ちを言い出そうとした時、彼の一言がそれを遮った。


「....あなたは、黒も似合うけれど、今回は、緑、がいい、と思うわ」


何故ならその緑のパーカーの色はネリエル自身の髪の色とよく似ていた。
ネリエルの中で、ノイトラが自分と何か近いものを身につけて欲しいという気持ちが働いた。
私と言ったら緑........このパーカーを着る時だけでも、私のことを思い出してくれたなら..........あなたの着ているものが私を結びつけるものだったりしたら嬉しい、なんて、、、


「(妄想もいい加減にしたほうがいいかしらね)」


「緑か....ハッ」


ノイトラはネリエルの返答に鼻で笑って返した。


「な、何かおかしいかしら?選ばせたのはあなたよ」

「いや、なんとなく緑って言うんじゃねーかと思ってその通りになったもんだからよ、


...そしてこの前この緑のパーカー初めて見た時何故か知らねェがテメーを思い出した。」

「...ふふっ」

「あァ?テメーこそ何笑ってんだよ気色悪ィ......って、変な勘違いしてんじゃねェぞ?俺は只この緑がテメーの髪の色に似てるから思い出しただけだぜ...」

「ふふふっ...何でもないわ。あなたこそ、何焦ってるのかしら?さ、決まったことだし、早く買ってどこかご飯食べに行きましょ?お腹空いちゃった!」

「ハァ!?ふ、ふざけんな...焦ってなんか無ェし俺はまだこれでいいっては言って無ェだろーが!」


そう叫ぶノイトラの声は既に自然とスキップを踏んでレジの方に向かうネリエルの背中には届かなかった。


その様子を見ながらノイトラは舌打ちをして同じくレジに向かう。
緑のパーカーを片手に持ちながら。


「気に食わねェ....


(....このパーカー着るたび余計テメーのことばかり考えちまうじゃねーか)」


その気に食わないという言葉の理由は最初に黒のパーカーを買ったら良かったものをずっと頭の中にいる緑と迷った挙句ネリエルに選ばせた自分に対するものであること以上にノイトラ自身重々解っていることがあった。それを解っていながらどうしてこんな面倒なことをしたのだろう。俺としたことが。


....そう、全てあの緑の所為だ。



あの緑が俺の全てを狂わせた。



嬉しそうにスキップする緑に嫌気が差すどころか憎らしいほど愛しく感じてしまうようなわけのわからぬ感情と何よりそんな感情を抱く自分自身に身の毛がよだつそんな放課後。





...むかつく....気に食わねェ。






-end-

2013.10.3


服の知識など皆無ですすいません。ノイトラは絶対ネリエル様以上にお洒落さん。


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