企画

□拍手文1(山本)
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その日も、私は俯いて歩いていた。

だって、下向いてないと石とかにつまづいちゃうし雨だと水たまりも踏んじゃう。







雨が降っている今、私は水たまりをよけながらピョンピョンはねるみたいに歩いていた。













「また下見てんだな。」







後ろから声をかけられた。
彼は外でやる部活に所属しているらしく、雨が降るたびに帰りが一緒になる。


「別に下見ててもいいじゃないですか。
うっかりしててこけたりとかガムとか犬のフン踏むのいやです。」


「ははっ!確かにな。でもさ、それだと今降ってる雨が止んでもわかんないぜ?」

彼は私の顔を覗き込む。
私はさらに下を向いた。

「その時は、家まで傘さして帰りますから。」

「んー・・・用心深いのもいいかもしれねーけどさ・・・。」


私が俯いていても見えていた彼のエナメルバックが私の視界から消えた。


「は、え・・・うわッ!?」



私の首が後ろからあったかい手に包まれて、カクンと上に向いた。


「下ばっかり向いてたら見えねーだろ?」





私の目には、曇り空の中にかかる七色の橋がいっぱいに入り込んでいた。

帰り道、私の目から出続けていた涙がみるみる引っ込んでいく。


「わぁ・・・。すごい・・・。」


私があげた声に、彼はさわやかに笑う。


「な、いいことあっただろ?毎日下向いて泣いてんのもこれでチャラになんねーかな。」



なぜ私が泣いてるのを知ってたのかは謎だけど、まぁいっかと思えた。

今はただ、彼にお礼が言いたくて。










「うん、ありがとう。」

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