短編・連載番外編

□貴方の名前
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この日の獄寺は、何時になく深刻な表情をしていた。


放課後の教室。補習に行っているツナを、ポツポツと話をしながら待っていた。



「獄寺?なんかあった?」

付き合い始めて早1年。

獄寺のちょっとした変化でも分かるようになってきた。

「…いや、別に。」

目を逸らして言うその言葉に、真実が含まれていないことは確実。

「あのさ…。」

私は正面に座っている獄寺の頬を両手で挟み込む。

「隠すの止めて。」

ちょっとだけ怒ったみたいに言ってみると、獄寺はビックリしたみたいに目を見開く。

「…笑わねぇか?」

そう、獄寺が言った。



「わかんない。場合によっては笑う。」

ニヤッと笑ってやる。



「なっ…!?」

「冗談。笑わない、約束する。」



笑いを引っ込めて、真剣にそう答えた。


「名前…で呼ばねーか、お互い。」





なんだ、その付き合いたてホヤホヤみたいなセリフ。

一瞬笑いそうになってしまったが、約束を思い出して堪えた。

もしかして…


「それでずっと悩んでたの?」


小さく頷いた彼を、私はかわいいと思った。







ホント、不器用って言うのかなんて言うのか…。

だから目が離せなくなっちゃうんだよ。






「…どうなんだよ。」

返事は、と聞かれて私は大きく頷いた。



しかし、何秒か後に私は間の抜けた声を出すことになる。


「…あ。」



「何だよ。」






「ごめん…。


















名前忘れた。」




獄寺のはぁ!?という言葉が私の耳に届いた。







「…で名前は?」



「…隼人。」












おわり。

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サブタイトル《名前忘れた》
お題提供 確かに恋だった様
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