翼の無い鳥

□第三話 イタリアから来たあいつと死ぬ気弾
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次の日、朝。

舞が学校へ行こうと歩いていると、真横を何かがすごいスピードで通過した。

一瞬、舞は自分の目を疑った。

「…何で…ツナ?」

まだ寝ぼけているのかと目を擦る。
擦った目を開いた瞬間、更に驚かされる光景を目にした。

なんと、ツナが蕎麦屋の配達のおじさんに正面衝突して真っ逆さまにそばの崖から落ちていく所だった。

「あ、つ…ツナ!?」

舞はガードレールから身を乗り出して崖の下を覗いてみた。

「笹川京子!!オレと付き合ってください!」

崖の下で町中に響くような声で愛を叫んでいるツナが舞の目に映る。

別に愛を叫んでいるだけなら問題ない、と舞は思うはずだった。
しかし、ツナの身なりを見るととてもじゃないが問題ないとは思えないのだ。

(なんでパンツ一丁なの!?)
告白されてた本人である京子はツナの前から逃げ出していた。

「てんめぇ!」

舞が京子に一瞬目を移したちょっとの間に、ツナが殴り飛ばされていた。
殴ったのは剣道部主将の持田剣介。
持田が嫌いな舞は迷わず持田を怒鳴った。

「おいこら持田ー!ツナに何すんだー!」

持田は崖の上の舞にチラッと目をやり、舌打ちをした。
それからツナに向かって
「ふざけてんじゃねーぞ!ヘンタイ野郎!」
と捨て台詞を吐き、学校へ走り去って行った。

持田が去ったのを見届けた舞は取り敢えずツナの所へ、と崖を下るために坂道を一気に下って走って行った。

舞の姿が一旦見えなくなるとほぼ同時に、ツナの前にスーツを着た赤ん坊が現れた。

「死ぬ気タイムは5分間だ。5分たつと正常にもどる。」

「!?」

鼻の中に異物があると感じて、ツナは片方の鼻を塞いで勢い良く異物を出した。

「た…弾だ!!やっぱ頭撃ちぬかれてたのかよ!!」

「あぁ。」
赤ん坊は当たり前だと言うようにサラリと答えた。
と、ほぼ同時にツナの耳に舞の呼ぶ声が届いた。

「舞!!」

「パンツ一丁で何やってんの!風邪引くよ!」

これ着て、と舞はジャージを差し出す。
ツナはありがたく受けとって、急いでそれを着た。

「持田め…確かに今日のツナはヘンタイだったけど殴ることないじゃない!」

舞は持田が走って行った学校の方向を睨みつけた。

「地味に傷口えぐるのやめてよ…。オレだってなりたくてパンツ一丁になった訳じゃないんだ、コイツが…ってあれ?」

ツナがキョロキョロと辺りを見回す。スーツの赤ん坊が消えていた。

「コイツって…どいつ?」

舞は首をかしげた。

「それがさ…」
二人は遅刻しないように学校に向かって歩きはじめる。
ツナは歩きながら舞に昨日から自分の身に起こっていることを説明した。

昨日家に帰ってゴロゴロしていたら急にリボーンと名乗る赤ん坊が現れたこと。

その赤ん坊はめちゃくちゃ強くて、しかも銃や手榴弾なんかも持っていて歯向かうことができないこと。

そいつが言うには自分がボンゴレ十代目でマフィアの次期ボスだということ。

今朝、歩いていて京子に会い、いきなりそいつに“死ぬ気弾”なる銃弾を頭に撃たれたこと。

死ぬ気弾は脳天を撃たれて死んだ者が一度死ぬ前に後悔したことで死ぬ気になって生き返る、ボンゴレファミリーの秘弾であること…




「リボーン…。ボンゴレ…。」

そう繰り返す舞に、余りに突飛すぎる話についていけてないのかとツナは思った。
「舞…信じられる訳ないよね、こんな話。オレだって信じられないし。」

やっぱり、とツナは肩を落とす。

そんなツナの手を舞は握った。

「信じるも何も、あたしはリボーンと知り合いだよ!すっごく良くしてもらったの!」

「えぇーー!?」

この町にリボーンいるんだ、と嬉しそうに言う舞をツナは呆気に取られた顔で見ていた。
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