風光明媚

□作戦失敗
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「…すごい。」

十数人はいたであろう敵が、獄寺のボムによってすべて蹴散らされた。

ユズキはそんな様子をただ見つめることしかできなかった。

「ったく…何してんだよ。ほら。」

ユズキは獄寺が差し出したし手に掴まって立ち上がろうとした。

しかし、

「…あ…あれ?」

膝が震えて立ち上がることができない。




…あたしは怖がってたのかな。

ううん、間違いない、怖がってたんだ。

そう気づいた瞬間に獄寺の手を握る右手に力が入る。

膝だけの震えがユズキの全身に広がった。

作戦に失敗しかけて笑っていたのが嘘のようだ。

思わず力を込めた手も震えている。
獄寺はユズキの右手を握り返した。


「…人を殴ったこともねーような奴がいきなりボムなんて使うからこんなことになるんだよ。」

「そーだね。」


いつもなら“うるさい!!”とユズキがかみつくところだったが、その時に限って必要以上に口を開くことはしなかった。



獄寺がそっと手を離し、ユズキの横に腰かけた。


「…ねぇ、獄寺。」

視線は獄寺に向けず、話しかける。


「…んだよ。」

答える獄寺も、視線は地面のほうに向いている。


作戦では、獄寺は了平と正面玄関から突破して屋敷に堂々と入り、綱吉と合流する予定だった。

「綱吉君のところ、行ってきなよ。あたしのせいで遅れちゃったけど…。」



言葉が、後半に行くにつれて小さくなっていった。
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