風光明媚

□お弁当を運んで
3ページ/4ページ

あたしはしばらく、前を見ずに走っていた。


ドンッ!!!


お約束――――――!!!!!


誰かにぶつかったあたしはそんなことを考えながら尻もちをつく。
これでぶつかるのってお約束だとかっこよくて優しい男の子だよね…。

…とりあえず顔をあげてみた。
確かにかっこいい男の子だった。ただ、絶対優しくない!!!全身から殺気がにじみ出てる!

「ねぇ…君、だれ?」
首筋に冷たい金属の棒(?)を当てられた。

「竹寿司のお弁当宅配便…ってとこですかね?」

首にあたっているものに、ぐっと力がこもった。
授業終わりのチャイムが聞こえた。冷たい汗が頬を伝う。

「ねぇ…不法侵入だよ?」
「え…リーゼントのお兄さんに若干ケンカ売って入れてもらったのに…。」
「関係ないよ。僕が不法侵入と言ったら不法侵入だ。」

ゴッ!!

鈍い音がして、頬に痛みが走った。
カッと、頬が熱を持ったかのように熱くなる。
口の中に、鉄の味が広がる。

「いった――!!」

り、理不尽だ!!

「ねぇ、キミはだれ?」

再び尋ねられた。

「…ユズキ。」

「ふーん。それじゃあユズキ、風紀を乱したから咬み殺す。」

お腹にも、鉄の棒がめり込んだ。
口から鉄くさいものが出そうになるが、辛うじて飲み込んだ。

「へぇ…倒れないんだ。」

「風紀乱してないし、早く帰んないと親父さんが心配するんで。」

にっこり笑って、後ずさる。

じりじりと、理不尽男が迫ってくる。

瞬間、あたしは窓から飛び出した。

あ、やば!!!!

ここ、3階…。

死んだぁぁぁ!!!!!あたしは目をつぶった。

あぁ…浅はかな自分を呪うっ!





しかし、痛くもなければすごい衝撃もなかった。
うっすらと目を開けてみる。



誰かがあたしを受け止めていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ