風光明媚

□お弁当を運んで
2ページ/4ページ

校内に入り、あたしは事務室を探していた。授業中らしく、シーンと静まり返っている。

事務室を見つけ、受付を軽くノックしてみたがあいにく事務員さんは留守だった。
…事務員さんにお弁当押しつけて帰ろうと思ったのに。

しょうがないから武君のクラスまで行くことにした。確か2-Aって言ってたような気がする。

2-A、2-A…あ、あった!
あたし教室のドアについている小窓から中を覗き込んだ。


うーん、綱吉君はあらぬ方向(かわいらしい女の子の方)を向いてるし、獄寺は携帯いじってるし、武君は…寝てる。

というか誰も先生の話聞いてないよね。先生涙目だよ?聞いてあげてよ…。って、お弁当届けるんだった!

…コンコン。

軽くドアをノックした。

「し、失礼します…。」

恐る恐る教室内に入った。
クラス中の注目があたしに向いている。
いきなり竹寿司の前掛けした女が入ってきたんだからそりゃびっくりするよね。
とりあえず親父さんのお弁当(いや、作ったのあたしだけどね)渡さないと…。
あたしは注目を集めたまま武君に近づいた。

「…あの人誰だろ?」
「山本のお姉さん?」
「いや、妹かも…?」

など、さまざまな憶測が飛び交う。

「武君、武君…。」

あたしは周りの目を気にしつつ軽く武君の肩を揺すった。

「…?ん………やっべ、寝てた!ってあれ…?ユズキ?…どーした、また迷子か?」

迷子違うーーー!!!
ヤバい、武君が寝ぼけてかわいい。…ってそうじゃなくって!!


武君はあたしの頭ぐっしゃぐしゃに撫でてる。
…あんたみたいなカッコいい人ににそんなことされるの免疫ないんだからねあたし。分かってんの武君?確信犯?天然?今のあたしの顔は絶対赤い。
女子からの視線が突き刺さるようになった。

「んーユズキ?その手に持ってるのって…。」

ようやく目が覚めたらしい。
あたしは何となく女子達の視線を気にしつつ軽く笑って武君にお弁当を渡した。

「忘れてったでしょ、コレ。」
「お、わりーわりー!今日急いでてな!!」

武君はあはは、と笑ってお弁当を受け取った。

「授業中に寝ちゃだめでしょ?頑張って起きてなきゃ…ね。」

勉強は睡眠誘発剤とか言ってた人がこんなこと言える立場にないよね!…とか自分を叱りつつホイッっとお弁当を渡した。
なんかこの誰だお前ってなってる空気があたしにはもう限界だ。お弁当が武君に渡った瞬間教室を走って出て行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ